1年生、戦争体験を聞く

西遠では、毎年5月に「殉難学徒慰霊式」を行っています。
去年は戦後70年ということで、新聞やテレビの取材もありましたが、
戦後50年以降はずっと生徒会が主催して、この平和を考える行事をずっと続けてきています。
平和について考えるこの慰霊式への準備として、
生徒は全員が「平和の作文」というものを綴り、新年度の担任がクラス全員の作文を読みます。
そして、その代表が慰霊式の当日、舞台で作文を朗読し、平和への思いを発表します。
平和の作文、2年生以上は春休みにそれぞれ宿題となります。
入学したばかりの1年生には、「戦争体験者のお話を聞いて、分かったこと、考えたことを作文にまとめよう」という宿題が今まさに出ています。
しかし、なかなか身近に戦争を体験した方を見つけるのが大変になってきてしまいました。
もちろんそこには戦後71年という年月があります。
でも、今もご自身の戦争体験や戦後の生活等をお話しくださる「語り部」の方々がいらっしゃって、若い世代に自らの体験を語ることで、次世代に平和への思いをつなごうと行動してくださっています。
今日は、浜松市遺族会の稲田会長さん、静岡県遺族会の大石副会長さん、そして、語り部として、7名の皆様が、土曜午後の生活会館にいらしてくださいました。
1階の学習室には、たくさんの1年生がやってきました。
戦争なんて本当に遠く遠く隔たった存在で、別の世界のことだ…と思っているかもしれない12歳の生徒たちは、
最初に「浜松の戦災を語りつぐ」というDVDを視聴しました。
いらしてくださった語り部の方々も、画面に登場し、ご自身の戦争体験を語っていました。
視聴後、「泣いちゃいました」と感想を述べる生徒もいました。
続いて、語り部の皆様が、それぞれの戦中・戦後の生活について語ってくださいました。


生徒たちはメモを取りながら真剣に聞いています。
遺骨収集のために硫黄島を訪れた写真が、生徒に回覧されました。
竹内様からは、硫黄島の旅のアルバムも貸し出していただきました。

このアルバム、しばらく校長室にありますので、生徒の皆さんは見に来てください。
私が何ともいえず悔しかったのは、
父親が戦死した家庭で育った方々が、戦後の世の中で苦労して育ったにもかかわらず、いざ就職するという時に「片親だから」という理由で就職を断られたというお話でした。
お国のために戦地に赴き、家族を残して亡くなった方々なのに、その息子さんが、「お父さんがいないから」希望する所に就職できないなんて…。
父親がいないからこそしっかりした仕事に就いて母親を安心させてあげたかったでしょうに、何と非情なことでしょう。
聞いていて、本当に悔しかったです。
戦争を絶対に起こしてはいけない…そういう強い思いで、西遠を訪ね、自らの辛い体験をお話しくださった皆様、本当にありがとうございました。
この会の後、西遠の殉難学徒の「愛の灯」像の碑文に見入っている生徒を見かけました。
戦争体験者の皆さんのお話をうかがって、改めて碑文の前にたった1年生の姿に、
平和の大切さの訴えがしっかりと引き渡されたんだな、と思い、
心が温かくなりました。
帰りに、私も「愛の灯」像を仰ぎ見てみました。
夕空へとグラデーションのかかった空に、純白の像がそびえています。

碑文を読むと、岡本富郎先生の朗々としたお声が耳に甦ってきます。

空の雲がきれいでした。