上野動物園のパンダに赤ちゃん誕生!
このニュースが昨日から日本列島を駆け巡っていますね。
明るいニュースはやはり嬉しいものです。
でも、…と考えてしまうのは、
5月末に高校講堂朝会で話したことが原因かもしれません。
5月27日の講堂朝会では、「どんな大人になりたいか」というタイトルで高校生の皆さんにお話をしました。
その時、旭山動物園の坂東園長さんの話題を取り上げました。
インタビューで坂東さんが言った言葉に、いろいろ考えさせられたからです。
旭山動物園は、行動展示で知られる人気動物園ですが、
ずっと掲げ続けているのは「伝えるのは、命」という考え方です。
命を軽視する風潮の中で、自然界の命の循環や「他者の命をもっと尊重すべきだ」ということを伝えたいのだと、坂東さんは語りました。
そして、「命に軽重はない」というお話の中で出てきた言葉が「客寄せパンダ」という言葉でした。
「客寄せパンダ」という言葉を、私も長いこと何の気なしに使っていましたが、このインタビュー記事を読んだ後は使えなくなりました。
人気者のパンダは、お客を呼ぶための「すごい動物」で、
では、動物園にいる他の動物は「すごくない」のか?
いや、パンダがすごくて、アザラシがすごくないわけがない。
行動展示で、アザラシの生態を余すところなく見せることで、旭山動物園のアザラシは人気者になりました。
アザラシだけではありません、それぞれの動物の行動をどう見せるか、旭山の皆さんはそれを真剣に考えました。
なぜなら、動物の命に軽重はないから。
どの動物も、大事な一つの命をもって生まれ、動物園に今いるからです。
旭山動物園の掲げる「伝えるのは、命」というポリシーを尊く思います。
今、パンダの赤ちゃん誕生で、テレビでは、「経済効果がいくら・・・」などとお金の話題が出ています。
報道機関が伝えるのは、命じゃなくて、お金なのでしょうか。
パンダは絶滅が危惧されている動物です。
その種に赤ちゃんが誕生したということは、とても嬉しいニュースです。
それを、いくら儲かるか、という話にしてしまうのは、命の軽視につながるように思えてなりません。
以前、小惑星探査機「はやぶさ」が、使命を終えて地球に辿り着き、燃え尽きていく映像を見て、幼い子供たちが涙を流したと報じられていました。
幼いながらも、「命」を感じて子どもたちは泣いたのでしょう。
子どもはそういう感性を持っています。
それを育むのも大人、歪めるのも大人です。
講堂朝会で私は高校生に「どんな大人になりたいですか?」と聞きました。
職業ではなく、「何を大切に考える大人になりたいですか」と。
動物園で「ホッキョクグマがダイブしないのは詐欺だ!」とクレームをつける大人なのか。
アザラシに見入る子供たちに「ここにはラッコはいないんだって」と言い捨てる大人なのか。
今、ニュースに出てくる大人たちは、道徳的に見て、必ずしも「良き先達」「尊敬すべき人」と言える人達ばかりではありません。
報道の仕方も、パンダのニュースが一例であるように、子どもたちに「良い考え方」を与えているとは思えないこともしばしばあります。
それはとても悔しいことです。
しかし、私は思います。
どんな大人になるかは、きっと今10代の間に培われていると。
西遠の生徒は、「典雅 荘重」の校訓の下で、日々学び、成長しています。
学習面だけでなく、強く、正しく、美しく生きることを、知らず知らずのうちに、価値観として育んでいるはずです。
価値観や人生観、道徳観など、西遠での2000日が作り上げた精神的土台は、
巣立って行った後も、西遠の生徒たちをずっと支えていくものだと思います。
「どんな大人になりたいか」
その答えを、高校生は「集会記録」に書いて提出してくれました。
今、一人一人に返事をしたためながら、
今週の講堂朝会の準備をしています。
パンダ誕生のニュースから、思ったことを綴りました。
坂東園長さんのインタビューは、AIRDOのサイトで見られます。→こちら