早いもので、「西遠オンライン学園祭2020」が10月3・4日に開催されてから、2週間がたとうとしています。そんな時に「オンライン学園祭への道 その14」今頃?とお思いでしょうか? 実は、明日の土曜プログラムの中で、HR展を行ったクラスはそれぞれ「振り返り」を行います。ご苦労さん会ではなく、「審査ルーブリック」に基づいて、自分たちのHR展が研究の深さや提案の具体性などどこまで到達できたのか、HR展で自分自身が21世紀型スキルなど具体的にどんな力をつけたのかを振り返ります。毎年、ここまでのプログラムをこなして、ようやく学園祭HR展という探究活動がピリオドを打つのですが、今年は、この「振り返り」の上に立って、ここからできる国際交流や地域創造のアクションを起こす、というさらなる挑戦が待っています。
さて、私は、学園祭の一週間前の9月26日に「全校講堂朝会」で「オンライン学園祭で学ぶもの」についてスライドを使ってお話しました。その翌週に提出された集会記録の感想の中から、HR展での最上級生である高校2年生が、今年どんなことを考え、どんな気づきがあったのか、今日はご紹介したいと思います。題して、「最後のHR展で学んだこと」。下級生にも大きな示唆を与えてくれる、4名の高校2年生の感想をどうぞ。
協働する喜び
☆昨年までは、責任者ではなくても教室の様子や製作物の出来具合等で進行状況がよく分かり、焦りなどが出たり、今やるべきことやどこが遅れているのか大変なのかが目に見えていましたが、今年はウェブだったので簡単には進行状況が分からなくて、今何を一番にすべきなのかなど全く分かりませんでした。自分から責任者に仕事をもらいに行かないと準備時間をボーっとして過ごすだけです。このままではダメだと思い、「仕事ある?」と聞きに行ったことで、HR展の準備がとても有意義なものになりました。HR展の準備をしている実感が湧いてきました。英語の翻訳や、アンケートの集計、その可視化などを携帯で行なったりと、少し戸惑うこともありましたが、やり遂げた時の達成感は、去年までと変わらず、とても嬉しかったです。
培ったリーダーシップ
☆今年度初めて「責任者」になりました。テーマ発案者の友人と二人で協力し、流れを考えるところからスタートしました。夏休みには、クラスメイト一人一人に調べてきてほしい内容を割り振り、取材についてもグループごとに各自アポを取っていってもらうことにしました。夏休みが明け、皆の進み具合を聞いたとき、全くやっていない人が三分の一ほどいました。「パソコンの使い方がわからなかった」「ケイタイが壊れた」・・・・その人たちの事情を聴いている時に、「人に説明をして動かすことはこんなにも難しいんだ」と身にしみて感じました。去年までの私だったら、たぶんやってない側の人間に入ると思います。人の前に立って、人を動かしてみて初めて、気づかされることが多々ありました。その後は、クラス一人一人の名前を紙に書いて、何をすればいいのかを全て箇条書きにして渡すようにしました。やはり、やるべきことがはっきり目に見えると、やりやすいのだと思いました。特に今年の学園祭はオンラインという「WordPress」の中だけなので、目で見て進み具合がわかる例年とは異なります。そこを何とかして皆に「見える」ようにしたいと思い、様々な工夫をしました。
21世紀型スキルを得る
☆今年はパソコンに向かってただ打つという作業が新鮮でした。今までの学園祭では、ICTリテラシーは情報収集の時のみ蓄えられるものでしたが、今回は、情報取集だけでなく、ウェブページを作るうえで、今まで以上に気をつける必要があったため、その力をつけることができたと思います。21世紀型スキルは、この学園祭で身につけることができます。「思考の方法」「世界の中で生きる」‥‥特にこの二つが身につけられるのではないでしょうか。中3から始まるHR展では、様々な学校行事・日々の生活・友人の活躍など、多くの刺激を受けることで、年々グレードアップしたものが作れると私は信じています。なかなか、社会・世界に私たち次世代を担う若者が声をあげることは少なく難しいことではありますが、このHR展では伝えることができます。できるからこそ、私たちの思い、未来へつなげたい伝統、希望を十分に出していくべきです。今後世の中がどのようになっていくかは誰にも分からないことだと思います。だからこそオンライン学園祭は新しいことにチャレンジするチャンスであると思いました。この学園祭で、今まで以上に様々なことを学びました。学んだことは今後の私に大きな影響を与えてくれると思います。
得られたものの大きさに気づく
☆HR展は、様々なことを吸収できる本当によい機会だと、最近心から思う。取り上げる題材について知識を得て、考えを深められるだけでなく、友人の姿から、自分に何が足りないかに気づくことができる。私は、責任者の姿を見て、自分には実現可能な計画を立てて皆を統率する力が欠けていると気づいた。また、世界のあるランキングを地図に起こしたいと友人に依頼したところ、はじめはうまくできなかったものの、友人は諦めず、すべてエクセルに打ち込んで、見事きれいな地図を製作してくれた。友人の忍耐強さに驚かされ、自分には足りないなと気づかされた。さらに、オンライン学園祭となったことで、間違いなくWordPressをはじめとする電子機器を比較的使いこなせるようになった。また、掲載する情報量に制限がないウェブ上で、いかに適切な量で言いたいことを伝えられるかということも、意識するようになった。HR展審査基準にも反映されている「21世紀型スキル」について、もう一つ重要な力があると考えている。それは、臨機応変に対応する力だ。コロナ禍で最も必要だと私自身が感じたからだ。このことは、校長先生が紹介した上田結香さんの短歌「『本当なら今ごろは』ってみんな言う本当なんてどこにもないのに」にも表れている。全世界の人々が予想もしなかった今回のパンデミックに、皆が動揺し不安や怒りを覚え、「本当なら‥‥」と誰もが何度も口にしたと思う。もちろん私もそうだ。ここで、私は、現実を受け入れ、それに即座に柔軟に対応する力が自分にあればと痛感した。今後も「新型」のウイルスが発生し、パンデミックを再び引き起こすことは大いにあり得るし、ウイルスだけでなく災害または人生において受け入れがたいことなどたくさんあると思う。それに対し、くよくよするのではなく、そこで新しいことを考えられる自分でありたいと思った。
高校2年生にとっては「最後のHR展」となった今年の学園祭。オンラインという初めての試みに果敢に挑戦した彼女たちの言葉には、得られたものの大きさ・かけがえのなさが感じられます。後輩たちはそんな先輩の姿を見ながら、行事の意義深さに気づき、その意義を継承し、自身もまた成長していくのでしょう。明日の土曜プログラムの中で行われる「振り返り」を通じ、「批判的思考」「メタ認知」といったスキルがまた少し彼女たちの力となっていくことと思います。
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今回ご紹介した高2の生徒の文章にもありましたが、夏休み明けの式で全校生徒に紹介した「朝日花壇」掲載の上田結香さんの短歌は、思いのほか生徒の心に響いていて、今回の集会記録には他にもたくさんの中学生・高校生がこの短歌のことを綴っていました。上田さんには、当ブログをお読みいただき、お手紙までいただいて、感激致しましたが、これほど生徒の心に届く短歌をお作りくださって、改めて、この短歌との出会い・上田結香さんとの出会いに感謝しております。ありがとうございました。
「本当なら今ごろは」ってみんな言う
本当なんてどこにもないのに
上田結香
8月23日の朝日新聞「朝日花壇」 より