本日1時間目の高校講堂朝会は、2人の女性からのメッセージを中心にお話しました。昨日お願いしたとおり、高校生にはメモを取りながら聞いてもらいました。
1.カマラ・ハリスさんからのメッセージ
1人目の女性は、カマラ・ハリスさん。アメリカ次期副大統領になる女性です。11月8日の校長ブログ「ガラスの天井を破る」でも紹介したカマラ・ハリスさんの演説を紹介しました。ポイントは以下の3つです。
1)故ジョン・ルイス下院議員の言葉
カマラ・ハリスさんが演説冒頭で紹介したのは、亡くなったジョン・ルイス下院議員が遺した言葉でした。「民主主義は状態ではなく行動である」——高校2年生の現代文の教科書に掲載されている「『である』ことと『する』こと」(丸山真男著)に通じる言葉でした。民主主義を守るためには苦しい闘いがある、とカマラ・ハリスさんは続けます。アメリカ国民にとどまらず、民主主義のうちに生きる人々が意識しなくてはならない言葉だと思いました。
2)母、そして何世代ものアメリカ女性たちの闘いの上に
カマラ・ハリスさんが振り返ったのは、インド出身の母のこと。そして、今日のアメリカの女性たちの基礎を築くために長い長い間闘い続けた女性たちの存在でした。アメリカで市民の性別を理由に投票権が否定されることが禁じられてから100年。投票権の人種差別が撤廃されて55年。無数の女性たちの闘いの上に今夜がある、とハリスさんは先人たちに敬意を表しました。 私はハリスさんの勝利演説を聞きながら、「祖母・母・娘の時代」(岩波ジュニア新書)を初めて読んだ時の感動を思い起こしていました。 日本の女性たちが参政権を得たのは、太平洋戦争が終わった、今から75年前。日本にも闘い続けた女性の歴史があります。今、私たちが享受している生活は、無数の女性たちの闘いの上に成り立っています。当たり前にある生活が、実はたくさんの苦難の道程を経たものに他ならないことを、私たちは学んでいかなくてはなりません。
3)少女たちへのメッセージ
ハリスさんは、「自分は副大統領に選ばれた最初の女性だが、最後の女性ではない、選ばれ。なぜなら、今日、アメリカの少女たちは、この国が可能性に満ちた国だとわかったからだ」と、あとに続く少女たちに向けて、希望溢れる力強いメッセージを贈ったのでした。
But while I may be the first woman in this office, I won’t be the last.Because every little girl watching tonight sees that this is a country of possibilities. And to the children of our country, regardless of your gender, our country has sent you a clear message:Dream with ambition, lead with conviction, and see yourself in a way that others might not see you, simply because they’ve never seen it before. And we will applaud you every step of the way. (中日新聞より)
生徒の皆さんは、ハリスさんの演説を聞いて、どんな感想を持つのでしょうか。
2.中満泉さんが15歳の自分に宛てた手紙
10月11日の国際ガールズデーに、中満泉さんが「15歳の私へ」という手紙を公開しました。中満泉さんは、現在、国連の事務次長を務める日本女性です。2018年には「世界の最も偉大なリーダー50人」にも選ばれました。
中満泉さんの「15歳の私へ」は、読んだ瞬間、ぜひ生徒たちにも紹介したいと思った文章でした。57歳の中満さんが、15歳の頃の自分を振り返り、力強く背中を押している手紙。女子校に通うあなたが今反発しているお父さんは、やがて最大の味方になってくれているよ、というところは苦笑しながら読みました。「広い世界や異なる文化への好奇心と探究心を失わないで」「努力すればなんでも可能になる」「教育は最大の武器」「知識と知恵を身につけるために勉強しよう」と呼びかけているところなど、世界中の女の子たちへのメッセージだと思いました。
今日、時間の関係で壇上では触れられませんでしたが、「知性」を大事に育む必要性を、いま私は痛感しています。中満泉さんのおっしゃる「知識と知恵」という「本当の『知』」です。
中満さんは、日本人女性初の国際連合事務次長として軍縮担当上級代表を務め、「核兵器禁止条約」の制定に尽力しました。3年がたち、ついに今年10月批准国が50か国となり、来年1月に発効が決まったのです。世界の平和のために力を尽くす中満さんに関連して、最後に1人の男性の活動を紹介しました。
3.Jリーグから「平和」を発信する高田明氏
最後に紹介したのは、高田明さんです。ジャパネットたかたの創業者と言えばおわかりでしょう。2015年に社長を勇退した高田さんは、Jリーグチームの「V・ファーレン長崎」の社長を3年間務めました。チームのキャッチフレーズは「愛と平和と一生懸命」です。このキャッチフレーズのもと、選手・監督・スタッフが原爆資料館を見学したり、サンフレッチェ広島との試合を「ピースマッチ」と名付け、広島が86、長崎が89の背番号のユニフォームで選手全員が登場したり、精力的に被爆地長崎を知ろうという若者をサッカー界で育てているのです。長崎からスポーツを通じて平和を発信する高田さんの活動方針に感銘を受けました。(参考:毎日新聞2020年11月12日夕刊)
大人からのメッセージは生徒の皆さんにどう伝わったのか。来週、感想を提出してくれるのを楽しみにしています。今日のメモを大いに役立てて自身の決意表明をしてくれたら嬉しく思います。