「戦争はいらない」

朝日新聞の8月15日の記事を読んだ元城小学校出身の方から、学校にお電話をいただきました。
お電話の主は、佐倉忠夫様。
元城小学校(当時は国民学校)を昭和19年に卒業され、戦後その同級生で戦争体験の文集を作られたとのこと。
そこには、元城小学校卒業後、西遠に進学した方の体験文もあります、とのことでした。
中でも、お隣にお住まいだった幸子さんは、西遠に進学後、昭和20年4月30日の空襲でご家族を亡くされたといいます。
ぜひそのご本をいただきたいとお願いし、18日午後、市内のラウンジでお目にかかることができました。
佐倉さんは、昭和6年生まれ。
元城校19年会、という名刺をくださいました。
小中学校や高校で今も戦争の語り部をされ、浜松大空襲の悲惨な歴史や、日本各地であった戦争の事実を、若い世代に伝え続けていらっしゃいます。

佐倉忠夫様

佐倉さんは早速、立派なご本を見せてくださいました。
「浜松大空襲 戦争はいらない ―私たちの戦争体験―」

これが、元城校19年会の皆さんから寄せられた戦争の体験文をまとめられた本です。
この分厚い一冊に、同級生の皆さんの平和への思いがこもっているのだと感じました。
中を開くと、お隣だった幸子さんの「戦争はいらない」という文章が巻頭を飾っていました。
この幸子さんの文の題名が、そのまま本のタイトルとなったのでした。
佐倉さんの書かれた「まえがき」には、2005年6月18日の日付が記されていました。
6月18日、浜松への大空襲があった日です。
目次を見て、驚いたことがありました。
何と、2年前に私たちがお話をお聞かせいただいた大中香代さんのお名前もあるではありませんか。
それにはこちらがびっくりしてしまい、
「新聞記事の2枚目の写真は、大中さんの話を伺った時のもので、ここに写っているのが大中さんです」
と申し上げると、今度は佐倉さんがびっくりされました。
お二人は同級生だったのです。
ご縁を感じました。
そして、もう一つびっくりしたのは、佐倉さんの口から、
「西遠なら、川合良治先生をご存知ですか?」
との言葉が出た時でした。
川合先生! 私にとっては、中高6年間のクラブ顧問であり、忘れられない恩師です。
佐倉さんと川合先生は、高校演劇教室の立ち上げで知り合われたお仲間だったのでした。
私が演劇の見方やテレビ番組の作り方を教わったのも、川合先生からです。
もしかしたら、川合先生がこの出会いを作ってくださったのかしら、と思わずにいられませんでした。
「浜松大空襲 戦争はいらない ―私たちの戦争体験―」
この本には、大空襲で大切なご家族や友人を亡くされた悲しみや爆撃への恐怖や憤りが詰まっています。
さっそく読ませていただいております。
休み明けには、学校の図書館にも置きたいと思います。
漢字にはかなが振ってあり、若い世代にも読みやすいようになっていますので、西遠の生徒たちにも是非読んでほしいと思っています。
佐倉さんたちが卒業した元城小学校は、今年の3月で長い歴史を閉じました。
しかし、その歴史の中で、戦争の大きな被害を受け、生き延びた皆さんがこうして固い絆で結ばれ、平和を希求しておられることに、一つの学校の大きな財産というものを感じます。
学校とは、入れ物ではなく、生きているものなんだという思いを強く感じた、昨日の出会いでした。