新年1月1日の朝日新聞「天声人語」には、ジョージ・オーウェルの「動物農場」が取り上げられていました。「動物農場」は、私にとって懐かしい一冊です。
「動物農場」は、私が中学2年生の時に、当時の担任の中林先生からいただいた一冊。そのクラス2年梅組では、掲示板にグラフが貼られ、生徒は1冊読むごとにその本を記入していました。そして、上の線まで来ると、担任から「一冊文庫本をプレゼント」というお楽しみ付き。私は一番乗りはできなかったものの、何とかプレゼントラインまで本を読み、先生に「何の本がいい?」と聞かれ、「動物農場」をリクエストしたのでした。
このリクエストのきっかけは、我が家にあった「玉川大百科」にありました。正確には、「玉川児童百科大辞典」だとさっき調べて確認しましたが、この大百科辞典が私の家にあったのです。21巻あった百科事典は、アイウエオ順ではなく、「数学」「物理」「化学」・・・などの分類で、親が私に期待を込めて買ってくれたのだと思いますが、そんな辞典を使いこなせるほどの勉強家でなかったことを今は悔やむばかりです。ただ1冊、第12巻「文学」だけは私の愛読書でした。世界の名作が紹介されており、あらすじを読みながら、この本を読んでみたい、この本も・・・と小説への興味が広がったものでした。その中の読みたい一冊が「動物農場」だったのです。「ロシア革命を動物たちの反乱に置き換えた寓話」と紹介されていて興味を持ったのでした。
生徒の変わったリクエストに、先生は笑顔で応じてくださり、数日後、待ちに待った「動物農場」をいただくことができました。すぐに読破したことを覚えています。動物たちの革命へのエネルギーと、革命の成功には高揚しました。しかし、革命が成功した後の不穏な空気、勢力争い、良からぬ企み、だんだんと歪められていく農場の様子に、怖さを感じたものでした。
さて、そんな「動物農場」が、2021年元日の「天声人語」に取り上げられました。筆者は、「旧ソ連を思い起こすだけではもったいない」と書き、「動物農場」を追われていくスノーボールという登場人物(登場動物ですね、正確には)に注目しています。コラムは、高浜虚子の俳句「去年今年貫く棒の如きもの」へと続きます。
新聞のコラムは、書き写したり要約したり、中高生にはとても勉強になるものです。高校1年の夏、「天声人語」の50字要約に毎日励んだことを思い出します。あの1か月ちょっとで、だいぶ要約の腕が上がったと自分で感じたものでした。社会への視野が広がったことも感じました。ですから、教員になってから、コラム要約の宿題を私もたくさんの生徒に課しました。これを読んで、「やったやった、やらされた!」と言っている卒業生もいることでしょう。いつも添削して返却したものですが、彼女たちの何らかの力になっていることを願います。
この冬休み、西遠生の誰かが「天声人語」の要約に励んでいるとしたら、新年のこのコラムを読んでどんなことを考えたのか、さてどう100字もしくは50字で要約したのか、聞いてみたい気がします。
また、「動物農場」は、講堂朝会で読書をテーマにお話しした時に、自身の読書遍歴として生徒の皆さんに紹介した1冊です。誰か読んだ人がいたら、教えてほしいなとも思います。
いつも書いていることですが、教師は生徒に読書の導きをすることも大事な役割だと、私は思っています。星の数ほどある本の中から、自分が読み、紹介できる本は本当に少ないですが、今年もこのブログを通じて本の紹介は地道に続けていきたいと思います。