最近のニュースから

今週は大きなニュースがいくつもありました。ちょうど西遠はテスト期間中だったので、友人同士で話題にしたり、SHRや終礼で先生がお話しする時間もあまり取られなかったかもしれません。しかし、世の中の動きに中高生も敏感でいてほしいものです。今日は、今週のニュースから2つを取り上げます。いずれも、「女性」という視点でとらえてみました。

アメリカ・バイデン大統領就任式

日本時間の21日未明、アメリカに新しい大統領が就任しました。ジョー・バイデン大統領の就任式をニュースなどで見て、希望のうねりを感じました。コロナ禍の中、派手な演出はない就任式やパレードでしたが、レディー・ガガさんによる大迫力のアメリカ国歌斉唱、22歳の詩人アマンダ・ゴーマンさんによる6分近い詩の朗読、カマラ・ハリスさんという初の女性副大統領の誕生、そしてバイデン新大統領の心にしみる演説など、心に残るシーンがたくさんありました。「今日は民主主義の日です」という新大統領の呼びかけに、分断の4年間を終了させ、これから民主主義を再生していこうとする固い決意が感じられました。

中でも、アマンダさんの詩「The Hill We Climb(私たちが登る丘)」の朗読の声は力強く、踊るような手の動きも滑らかで、鮮やかな黄色のコートとともに心に焼きつくものでした。まだ22歳という前途洋々たる若者が就任式に登場したことも、大きな希望を抱かせるものです。こちらから、朗読の様子を見ることができます。ぜひ6分間、彼女の朗読を聴いてみてください。彼女もまた、未来を自らの力で拓こうとしている女性です。

アメリカは、WHO脱退を撤回し、地球温暖化対策の「パリ協定」にも復帰、メキシコとの国境の壁建設の中止など、トランプ政権の時と大きく方針を転換しました。地球温暖化対策は、言うまでもなく、国を越えて皆で早急に取り組まなくてはならない大きな問題です。そういった地球規模の問題に取り組む姿勢がアメリカから今一度示されたことは、世界にとって大きな前進だと強く感じました。

核兵器禁止条約発効

2017年に国連で採択された「核兵器禁止条約」が、1月22日、遂に発効の日を迎えました。サーロー節子さんをはじめ、被爆者の方々の喜びの表情が、条約発効を伝えるこのニュースの中で何度も映し出されました。サーローさんは、「これは最終ゴールへの最初のステップ」「被爆した何十万の死者の記憶に思いをはせ、核兵器の完全廃絶まで、いとしい死者とともに歩み続けましょう」とメッセージを寄せました。長い苦難の道程を歩んできたサーローさんの言葉には、これからの歩みが決して楽な道ではないことも理解したうえで、それを包み込むような荘厳な響きがありました。22日現在で批准を済ませた国と地域は51。唯一の被爆国である日本は残念ながら参加していません。核の恐ろしさを最も知る国として、何とかできないものでしょうか。広島や長崎を訪ね、被爆者の和田耕一さんの体験を直で聴いた一人として、歯がゆい思いを禁じ得ません。

この核兵器禁止条約の国連での採択には、国連事務次長の中満泉さんも大きな役割を果たしました。中満さんのことは、何度も講堂朝会やこのブログで紹介していますが、中満さんの師匠ともいうべき方が緒方貞子さんです。昨年亡くなった緒方貞子さんに関する番組が、今日も放送されていました。NHK Eテレ「TVシンポジウム『緒方貞子さんが遺したもの』」です。2020年11月2日にJICAが開催した「緒方貞子元JICA理事長追悼記念シンポジウム」の模様を放送した番組でした。私は偶然、最後5分ほどを見ることができましたが、緒方さんゆかりのパネリストのお一人の女性が、緒方さんのエピソードとして、「国際貢献のために私は何をすればいいでしょうか、と尋ねた大学生に、緒方さんは『あなた、大学生でしょ?お勉強なさい』とおっしゃった」と紹介していました。また、別の方は「緒方さんにはいつも『あなた、自分の目と足で確かめたの?』と言われました」と紹介していました。

国際政治はいろいろな事情が積み重なって複雑ですが、その複雑さをものともせず、そこに生きる人々の「命」を最優先事項として考え行動したのが緒方さんでした。その突破力を受け継いだ中満さんが発効に尽力したのが「核兵器禁止条約」なのです。日本女性のこうしたリレーを、次に受け継いでいく女性たちの一人にならなくては、と思うと共に、そのことを若い前途洋々たる生徒たちにこそ伝えていこう!と改めて決意しました。