図書館入り口に置いている「小さな白板(ホワイトボード)」は、第9週目になりました。5月31日から本日6月4日までの「小さな白板」をご紹介します。
5月31日(月) 今週は西脇順三郎の詩からスタート。
西脇のからっとした詩の世界は、じめじめした日本とは違う世界へと私たちを誘ってくれます。この詩はよく教科書にも登場します。「女神の行列」=「雨」。ヨーロッパに降る雨を想像して読んでみてください。ギリシャでしょうか、イタリアでしょうか、噴水や青銅の像、神殿やコロッセオを濡らす優しくて明るい雨を擬人化して表現した西脇独特の世界。難解だけれど、魔法にかけられたようにその世界に迷い込む感覚が、西脇順三郎の詩にはあるように思えます。ふと、大学時代の「比喩」についての講義を思い出しました。
6月1日(火) 月のはじめなので、その月に因んだ詩を紹介しました。
茨木のり子さんの「六月」、その第3連です。第1連は「どこかに美しい村はないか」と牧歌的な雰囲気ではじまり、第2連は、それが「街」になります。村や街で探すのは人々です。だから、第3連は、「人と人との力」を探すのです。そこには彼女の強い叫びがあります。決して牧歌を書きたかったのではない。彼女の高まっていく思いが、この詩の魅力だと思います。
6月2日(水)~5日(金) 「あじさい」
紫陽花を見ていて、ふっと「六月のしなやかな手」という表現が遠い遠い記憶の中から呼び起こされてきました。郷愁に誘われて、一編の詩を探しました。見つけたのは、「紫陽花」という詩です。小学校時代に国語の教科書で出会った詩でした。調べると、作者は三越佐千夫という方でした。詩の一節しか覚えていない私ですから、作者名も全く記憶に残っていません。題名は「あじさい」と自分の教わった時のひらがな表記で、3連の詩を3日にわたって紹介しました。
一日目、第1連は横書きでしたが、2・3連が長いので、木曜と金曜は初めて縦書きにしてみました。しかも、作者の三越佐千夫さんのお名前を1日目に間違えてしまうという失態もやらかしました、三越さんとそのご遺族の方々、ごめんなさい。
「六月のしなやかな手」「「六月の手は魔術師」「あじさいの微笑はいよいよやさしい」などの表現、優しくて、どこか幻想的です。小学生の女子にはちょっとよそ行きの世界だなあと思った覚えがあります。だからこそ、「六月のしなやかな手」というフレーズを約50年たっても覚えていたんでしょうね。
オオバの郷愁に3日間つき合ってくださったみなさん、ありがとうございました。次週は、さてどんな詩や短歌に出会えるでしょうか?