「大地の子」

この夏、大河ドラマが五輪の間休止だった代わりに、月曜の夜9時からのBSP「大地の子」を一週間の楽しみにしていました。何度も何度も観たドラマですが、今回もドキドキしながら観ています。遂に明日が最終回放送日です。

山崎豊子さんの原作を読破したのは、平成3、4年頃だったでしょうか、私は子育ての真っ最中でした。山崎さんの取材力、情熱ほとばしる表現、ドラマチックな展開…。中国の残留孤児や文化大革命、農村の様子、そして日中の政治のかけ引きをここまで書くのかと驚かされながら、我が家では母と競争するように読み進めました。

しばらくして、「大地の子」のドラマ化決定という記事を見つけた時には、目を疑いました。その内容とスケールから、母とも「いや、あの本のドラマ化は無理でしょう」「ほんとに実現するのかなあ」「見てがっかりしそうだねえ」などとドラマ化にはかなり否定的な大庭家でありました。

そして、1995年の初回放送の日を迎えたわけです。 NHKの放送70周年を記念した日中共同制作 として土曜ドラマ枠で放映された「大地の子」は、本当に素晴らしいドラマでした。第1回を見終わった時、文句など一つもありませんでした。テレビ初出演で主役の陸一心役を務めた上川隆也さんは、無名だったからというよりも、中国語のうまさから、中国人俳優だと思っていた人も少なくなかったようです。

我が家に今もとってある「大地の子」の特集を組んだ「週刊NHKステラ」と山崎豊子さんの本。

山崎豊子さんの「『大地の子』と私」も、取材秘話満載で、とても興味深く読みました。当時、中国を取材することは至難の業だったと思いますが、山崎さんの不撓不屈の精神が、この名作を世に出す原動力となったのでした。中国の胡耀邦総書記に何度も面談を申し込み、強い信念で取材活動を行った山崎さん。山崎さんの死後発見された取材テープも、今回のドラマ再放送に合わせてBSPで放送されましたが、よくぞここまで情熱的に取材し、執筆してくださった…と改めて思いました。

実は、私、このドラマを何度も観た後で、もう一回原作を読み直しました。もう15年も前のことになりますが、筋腫の手術・入院中にどっさり病室に本を持ち込み、「功名が辻」(翌年、上川隆也主演で大河ドラマ化されることになっていた)読破の次に、「大地の子」(全3巻)再読となったのでした。改めて読み直してみると、原作に忠実な台詞が多かったことに気づかされ、ドラマの制作者たちが原作をいかにリスペクトしていたかを感じました。「大地の子」を読んでいる私に同室の皆さんが「あ、このドラマ、私も見た!」「泣けるよね」と、次々声を掛けてくださったことを思い出します。

今回の再放送が始まってからも、何人かの方と感想を語り合うことができ、感激しています。7月18日のブログにも書きましたが、ドラマ「大地の子」は、個人的に20世紀最高のドラマだと思っています。 実の父親役の仲代達矢さん、育ての親の陸篤志役の朱旭さんの演技も本当に素晴らしいです。さらに、最終回、原作にはないラストシーンに感動し、涙が止まりませんでした。ラストに流れる「大地の子」のテーマも本当に素晴らしい曲です。

「大地の子」は、明日21時から、第10話「冤罪」・第11話「長江」(最終回)が2話続けて放送されます。タオルを手元に準備してみる予定です。皆さんも夏の終わりの名作ドラマ鑑賞、いかがでしょうか。