学園祭で大忙しの間の「小さな白板」です。第23週は、動物特集です。
9月27日(月) 天上から歌を投げられあおぎみる鳥ははるばる旅をしている 早坂類
鳥の声に空を仰ぎ見ることがよくあります。鳥は、本当に遠くの空からも響き渡る素晴らしい声を持っていますね。空から地上をどう見ているんだろうなあ、と時々思います。
9月28日(火) 群がれる人頭の彼方見やりつつキリンはしづかにやせて佇ちゐし 河野裕子
動物園の人だかりのはるか上に、キリンの頭はあって、その視線の先は、人々の頭を超えたはるか遠くなのでしょう。「佇ちゐし」が読めません、と中学1年生が司書の水谷先生に訴えてきたそうです。「佇(たたず)む」ですから、「佇(た)ち」。「ゐ」は「い」と読んでくださいね。読めない字は想像していると、読み方も推理できますよ。そして、自分でどんどん調べてくださいね。
9月29日(水) 秋の小鳥はらはらと枝に飛び移る 正岡子規
正岡子規は、病床から庭の小鳥を見ていたのでしょうか?はらはらと、という表現が、軽い体の小鳥を想像させます。メジロやシジュウカラを見ていると、音もなく枝から枝へと動き回る、その様子がほほえましくもあり、病の身にはうらやましくもあるのではないでしょうか。
9月30日(木)
空を切り裂いて落下する滝のように/僕はよどみない生命(いのち)を生きたい/キリマンジャロの白い雪 それを支える紺碧の空/僕は風に向かって立つライオンでありたい
さだまさし「風に立つライオン」より
私は、この「風に立つライオン」を初めて聴いた時、涙が出ました。動物特集の9月最後の日は何の動物にしようかなと思いましたが、この「風に立つライオン」の歌が思い出されて、この詞の一部を紹介しました。さだまさしさん、昨日は土石流の被害を受けた熱海市を訪れていましたね。さださんのTシャツは風に立つライオンの柄でした。「風に立つライオン基金」というものがあります。詳しくは、こちらをお読みください。
10月1日(金)
鯰よ、/お前の鰭(ひれ)に剣があり、/お前の尻尾に触角があり、/お前の鰓(あぎと)に黒金の覆輪があり、/さうしてお前の楽天にそんな石頭があるといふのは、/何と面白い私の為事(しごと)への挨拶であらう。
高村光太郎「鯰」より
大人でも読めない字だらけだったので、今回はさすがにフリガナをいくつか振りました。動物特集の最終日は、「鯰」です。え? 詩の題も読めない? 鯰=「ナマズ」ですよ。光太郎が妻智恵子との幸せな新婚時代に書いた詩です。愛する妻が近くにいる幸せの中で、鯰という彫刻のモデルに向き合い、充実した芸術家生活をしている様子が漂っている詩です。
この光太郎の「鯰」は、私が教育実習で高校1年生に教えた教材でもありますので、私にとっては「教師の原点」みたいな詩です。懐かしいなあと思いながら書き写しました。教育実習は、もちろん母校西遠で。担当教官は、学級担任が山口厚先生、教科担任は鈴木由紀子先生でした。大変お世話になりました。あの時、下手な授業をしたオオバのクラスの生徒たちは、この詩のことで何か心に感じてくれたでしょうか…?(聞くのが怖いです!)
学園祭の最中は、図書館は模擬店の関係で閉館しています。ですから、「小さな白板」第23週はここで終わりです。学園祭閉会式の10月4日は、秋休み前の前期終業式の日でもありますので、4日のを2・3日の代わりに、第23週のおまけに入れてください。
10月4日(月) 「超超超いい感じ」より「超超超超いい感じ」のほうがややよい 工藤吉生
学園祭が終わった生徒たちの達成感・高揚感はどのくらいでしょう。そんなことを考えながら、10月4日の短歌を選びました。秋休み明け、元気に再会したいという願いも込めて。「短歌研究」2021年9月号掲載の短歌です。
【秋休みの学園】
浜松のキンモクセイ、ようやく咲き始め、甘い香りを漂わせてくれています。今年はモッコクの木にもたわわに実がなっていますので、鳥たちには嬉しい食糧確保の季節到来です。