小さな白板 第27週

図書館入り口の「小さな白板(ホワイトボード)」、11月1日からの第27週をお届けします。

11月1日(月)
 強い力 立ち塞がろうと/僕は諦めはしない/ひとかけらの勇気が/僕にある限り
                 小池修一郎作詞「ひとかけらの勇気」
                 (ミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」より)

前週末10月30日の中学講堂朝会で「勇気」の話をしました。「勇気」という言葉を発するとき、私の中にこのテーマソングが流れるのです。♪ひとかけらの勇気が僕にある限り♪ は私の自己啓発ソングの一つ。宝塚の初演をすごーく見たかったミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」ですが、チケットが取れず、のちにDVDで見ました。名作です…。

11月2日(火) ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲  佐佐木信綱

有名な短歌なので、教科書で習った人も多いかと思います。「の」の字の繰り返しの中で、見事に視点が絞られていくこの歌。最後は、塔の上の雲へと、視点が上へ動きます。その風景に動きはないのに、この短歌を読んでいる読者の視点は大いに動かされる、その巧みさが好きです。薬師寺の塔の上の一片の雲をこんなにダイナミックに表すことができるなんて、短歌ってすごいと思います。「ゆく秋」には、11月2日はまだ早いかなとも思いましたが、翌日もう一つの短歌を紹介したくて…。

11月4日(木) スペインのアンダルシアのグラナダのアルハンブラのラバボの落書き 高野公彦

高野公彦さんの歌集「水の自画像」を買い求めました。この短歌「スペインのアンダルシアのグラナダのアルハンブラのラバボの落書き」は、絶対に佐佐木信綱さんの「ゆく秋の」を意識していますよね。舞台を東洋から西洋に移して、雲じゃなくて、ラバボ(どうやらトイレのことらしい)の落書きかあ、と、くすっと笑ってしまいました。高野さんの「本歌取り」は、他にもたくさんありました。また、老いや死を意識しながら、独居老人のおかしみも歌にする強さやしなやかさがあって、読み応えのある歌集でした。また、この白板で紹介できればと思います。

11月5日(金)
たった一つでなければならず、たった一つであることが素晴らしいのだという思い込みから外れること。そうすれば人は一足の自分の靴に拘泥せず、他者の靴を履くために脱ぐことができるようになるかもしれない。言葉はそのきっかけになれる。 ブレイディみかこ「他者の靴を履く」より

前日のスペインから、ブレイディさんの住むイギリスへ。ブレイディみかこさんは「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」が有名ですね。この本の中で、シンパシーに対して、エンパシーという言葉があり、シンパシーは共感する感情、エンパシーは共感できる能力だと説明されていました。そして、エンパシーを説明するときに、みかこさんの息子さんが「他者の靴を履くことだ」と答えたくだりが、話題になったのでした。ブレイディみかこさんは、その部分を説明する義務があると考え、今年「他者の靴を履く」という本を出版しました。その本からの一節です。寛容や共感の邪魔をしている「たった一つでなくちゃダメ」という考え方。そこからの脱却に、言葉はきっかけをくれると言います。この一節だけではとても理解できない内容なので、ぜひ、「他者の靴を履く」ブレイディみかこ著(文芸春秋)を読むことをお勧めします。

11月6日(土) 「真実だけが耳に痛い」Il n’y a que la vérité qui blesse. フランスのことわざ

イギリスからフランスへ(笑)。第27週の最後は、フランスのことわざを紹介しました。人から非難を受けた時、本当にその言葉がグサッと胸にこたえるのは、それが的を射た内容の非難であるからこそだ、という意味です。ギクリ、グサリとした時にこそ、自分をしっかりと省みなくてはいけないですね。

今日は西遠模試でした。受験生の皆さん、お疲れ様でした!

新しい週が始まると、西遠では、高校3年生以外は「定期テスト」が始まります。テストに向けて頑張りましょう。