11月8日から13日までの「小さな白板(ホワイトボード)」を振り返ります。中1から高2までが定期テストを迎えたこの週、前半は同世代の短歌を紹介しました。
11月8日(月)
シャーペンをカチリと押して出すやる気スイッチ切り替えうまくいくかな
中2 篠﨑さくら(第20回NHK全国短歌俳句大会ジュニアの部 入選)
テストに臨む西遠生に、「スイッチ切り替え頑張れ!」とエールをおくる気持ちを込めて。
11月9日(火)
パキスタンウズベキスタンカザフスタンタジキスタンにアフガニスタン
木村海斗〔甲陽学院中学校〕
第18回与謝野晶子短歌文学賞 青春の短歌 中学生の部入選
社会のテスト前に眉間にしわを寄せて暗記しようと必死な男子中学生が目に浮かびました。彼の絶叫が聞こえるようで、思わず「うまい!」と唸った短歌。
11月10日(水) 教科書の左右の厚み左から反対がわへ流れてゆくよ
下地可倫 〔大阪教育大学付属平野中学校〕
第18回与謝野晶子短歌文学賞 中学生の部 青春の短歌賞
みそひともじの中に、一年の時の流れ・一日一日の積み重ねを感じさせる短歌ですね。決して重々しくないけれど、勉学にいそしむ中学生の日日がここにあります。
11月11日(木) たったひとりのマララなれどもつづきくる少女居ることマララに倣え 長澤ちづ
前夜、マララ・ユスフザイさんのご結婚のニュースが飛び込んできました。彼女が、銃弾に倒れて生死の境をさまよっていた時、こんな素晴らしいニュースが聞かれる日が来るなんて、想像もできませんでした。しかし、回復した彼女は暴力に屈することなく自身の信じることを勇気をもって世界に発信しました。ノーベル平和賞に世界中が湧きました。そんなマララさんに少女たちが続くことを願った短歌。マララさんの結婚の報を聞き、翌日の白板にて紹介しました。
11月12日(金)
いい戦争はない。絶対にない。聖戦とかね。平時に人を殺したら死刑になるのに、
戦争でたくさん殺せば勲章をもらったりする。おかしくないですか。矛盾があるんです。
戦争には。 瀬戸内寂聴
マララさんの結婚のニュースが飛び込んだ翌日、今度は作家の瀬戸内寂聴さんご逝去のニュースが入ってきました。99歳というご長寿とはいえ、あたたかい説法をされ、平和をこよなく愛した寂聴さんの死に、寂しさが押し寄せました。新聞各紙が寂聴さんの生前の言葉を掲載。2015年8月15日付東京新聞朝刊に掲載された〈瀬戸内寂聴 ロングインタビュー「青春は恋と革命よ」〉の中から言葉をいただき、紹介しました。→記事はこちらから。
11月13日(土)
「私たちは、一人の非常に個性的な作家を亡くしたと同時に、近代文学と現代文学を結ぶ生き字引を失った」(平野啓一郎)
寂聴さんの死を悼む各界の声が新聞に掲載され、ネットにも載りました。その中から、京都新聞に掲載された作家の平野啓一郎さんの言葉を紹介しました。記事はこちらからどうぞ。文学史の「生き字引を失った」という言葉は、国文学を学んだ一人として、私の心にとても重く響きました。
瀬戸内寂聴さんご逝去のニュースが流れたちょうど同じ週末に、学園を陰からずっと支えてくださった方の訃報が届きました。心優しく、いつも周囲を気遣ってくださった慈愛あふれる方でした。
13日の夕暮れ、本館のステンドグラスが暖かい光を放っていました。佐々木松次郎先生の描いたマリア様の姿に思わず涙が出ました。
謹んで故 岡本美登里様のご冥福をお祈り致します。