小さな白板 第34週

2021年最終週の「小さな白板(ホワイトボード)」です。昨日の授業納めの式では、中学で1つを紹介し、高校は5日間すべてを紹介しました。心に残った言葉はあるでしょうか。

12月20日(月)
学校は「誰とでも仲良くする場」ではなく「人との接し方を学ぶ場」です。親友だからといって、すべてが同じわけではない。普段は話さなくても、いざというときに支持してくれる人もいる。少し距離をおくことでいい関係になれる人もいる。自分を大切にした上で、人も自分も輝く方法を見つけよう。   千葉聡

ちばさと先生が今月初めのTwitterにこの文章を載せた時、学校の在り方について考えさせられました。学校が無条件に誰とでも仲良くすることを強いているとしたら、子どもたちには本当に居心地の悪いになってしまう。「人との接し方」をもっと丁寧に教えていくことの大切さを嚙みしめました。「小さな白板」2021年最終週にこれを載せたのも、生徒の皆さんに学校の在り方、自身のあり方を考えてもらいたかったからです。まず自分を大切にして、そのうえで、みんなが輝く場にしなくてはいけませんね。新年の心構えの片隅に、この考え方があったらいいなと思いました。

12月21日(火)
わずか1万年前に文明に火をつけた人類は、アッという間に四〇億年の生命の歴史を踏みにじる大変な失敗を起こしてしまいました。一度走り出してしまった文明という自然破壊はもう止めることはできません。加速されるばかりです。とにかく一度、地球生物がたどった道筋をよく見直し、どうしたらこの疾走する自然破壊に歯止めがかけられるか考えてみる必要があります。  石川依久子

生物学者の石川依久子先生が「人も環境も藻類から」の前書きに記した文章です。藻類を知ることで、人の生活や環境についても深く考えることができると、石川先生は、少年少女にもわかりやすくイラストを交えてこの本を書かれました。藻類って何なの?「海藻」と「海草」なんだ!というレベルの私にも、とても分かりやすい本でした。生物の進化の中で、人間だけが自然破壊という暴走をしている、…それを足元から見つめ直すことのできる本です。石川先生は2015年に亡くなられましたが、今の地球や人間に警鐘を鳴らすこの本は、もっとたくさんの人に読まれるべきだと思いました。

12月22日(水)
私たちは、今行動しなければ何が起きるか想像する勇気を持たねばなりません。 マリア・レッサ

マリア・レッサさんは、今年のノーベル平和賞を受賞した女性です。フィリピンのジャーナリストで、社会の不正に立ち向かい、民主主義の失墜を食い止めようと真実の追求を続けています。その姿勢が評価され、ロシアのジャーナリストと共に、ノーベル平和賞を授与されました。その授賞式でのスピーチの一節を紹介しました。昨日の授業納めの式でも触れましたが、「勇気」は「人間性」の大事な要素の一つです。真実を追求する姿勢を貫く時、「行動しなければどうなるか」を考え、その先に危険があるとしても決してひるんではいけないというジャーナリストとしての矜持をマリアさんのスピーチに感じました。こういう姿勢のジャーナリストがいるからこそ、私たちは真実を知ることができるのです。

12月23日(木)
批判的思考とは、何でもケチをつけて文句を言うことではない。物事が「本来あるべき状態」から外れているのではないか、皆が当たり前と思う何気ない言葉や慣習が、実は社会に悪い影響を及ぼしているのではないかと「気づく」能力。               山崎雅弘

現代史研究家でグラフィックデザイナーの山崎雅弘さんの言葉です。「批判的思考」は21世紀型スキルのなかにも挙げられているスキル。その本質を説明している言葉だと感じ、紹介しました。《「あるべき状態」から外れていないか?》《当たり前だと思っているけれど実は悪い影響を及ぼしていないか?》という思考の仕方を、私たちはトレーニングしなくてはなりませんね。山崎さんの2021年11月17日のTwitterから紹介しましたが、彼の呟きは上記の文章にもう1文続いています。「その能力を持つ大人の割合が高い社会は大きな脱線事故を起こしにくい。」という1文です。大人への大きな宿題だと感じました。

12月24日(金) 
人間にとって最高の幸福は、一年の終わりにおける自己を、その一年の始めにおける自己よりも、遥かに良くなったと感ずることである。              トルストイ

授業納めの日、トルストイのこの言葉で、今年の白板を終えました。今年皆さんは「最高の幸福」を感じられそうですか? 今年が無理そうなら、ぜひ来年、挑みましょう。一年の終わりにおける自己の成長を目指して。