世界の中で生きていくために

西遠では、今年、「未来を拓く女性」になるために、「確かな学力」「世界で生きる力」、そして「豊かな人間性」を育むことを、生徒に呼び掛け、様々な行事やプログラムを実施してきました。

コロナ禍の中で、海外への研修旅行や留学生の受け入れなどが全くできなくなって2年たとうとしています。そんな中で、「イングリッシュ・サマーキャンプ」は、昨年度実施できなかった中学3年生も一緒に、中2・3年の合同行事として、10月に学校を舞台に実施しました。サマーではなくオータム、そして宿泊はできず、学校に通う形での実施となりましたが、世界各国から日本の大学に留学している皆さんが学園に集まってくれ、英語漬けの生徒たちの笑顔が輝く3日間となりました。

失敗を恐れず、大きな声で自分を表現することに積極的だった生徒たちの姿は、我々教員にも驚きと感動を感じさせるものでした。英語が苦手だと尻込みしていた生徒も、留学生の方々や友達に支えられ、「だれ一人置いていかない」という方針の中で、勇気を出し、自身の殻を破ることができました。

また、インドやインドネシア、アフガニスタンなどおそらく生徒たちにとって初めて出会う国の人々と触れ合う体験はとても貴重でした。様々な国から来た留学生に、その母語を教わるという得難い体験もし、世界の様々な国に想いをはせることができたことも大きな収穫でした。

高校1年生もまた大きく成長しました。12月1日から3日間行われた「エンパワーメントプログラム」という初めての行事に挑んだのです。これは、西遠が研究校として指定を受けている「静岡県グローバルハイスクール」2年目の研究行事です。学年全員が果たして英語漬けの日々を送れるのか、中学生のイングリッシュサマーキャンプより数段レベルの高い内容に生徒がついていけるのか、生徒だけでなく先生方も不安を持っていました。

しかし、高校1年生たちもまた、大きく羽ばたいたのです。大学院で学ぶ世界各国の留学生の方々は、その学問のことも話してくれ、英語の力はもちろん、大学進学や学問について考える機会も生徒に与えてくれたのでした。ひたすら英語を話す3日間で、自分のこと、西遠のこと、浜松のことを新たな視点で見つめ、発見することができたのも、大きな収穫でした。

3日間を終えた高校1年生たちは、「街中で耳に入る会話が全部英語に聞こえた!」「寝言を英語で言ってたらしい」などなど、英語で過ごす濃密な時間だったことが分かるエピソードを語ってくれました。

世界の中で生きていくために、私たちは狭い世界から飛び出し、たくさんの人々と出会うことが必要だと考えています。しかし、コロナ禍で海外渡航は今叶いません。そんな状況の中で、日本に暮らし、学び続けている留学生の皆さんが西遠を訪れてくれたこと、その指導の下で生徒たちが大きく成長したことは、コロナ禍にあっても「世界の中で生きる力」を得ることが決して不可能ではないことを教えてくれました。様々な国の事情を知ること、日本を学問探究の場に選んだ人々の決意や目標を知ること、それが生徒たちの視野を大きく広げてくれたことを、私は嬉しく思います。

2022年の世界はどう動いていくのでしょう。不寛容が世界を覆い、争いの火種の気配も否めません。しかし、そんな情勢をそのまま進めてはならないと思います。先日、最終回を迎えた「青天を衝け」では、主人公渋沢栄一が「国と国の関係も、人と人から始まるのだ」と熱く訴えていました。世界平和のためにも、人と人の関係をしっかりと構築することーー今年行われた二つの行事が、生徒たちにとってその確実な実践になっていることを心から願います。