越年してしまいましたが、12月11日の全校講堂朝会の集会記録を今読ませてもらっています。
12月11日は、「読書から人権を考える」というタイトルで、人権を考えるための10冊の本を紹介しました。
- 「日本国憲法」(小学館)
- 「アンネの日記」アンネ・フランク著
- 「夜と霧」ヴィクトール・フランクル著
- 「あの頃はフリードリヒがいた」リヒター著
- 「君たちはどう生きるか」吉野源三郎著
- 「支える、支えられる、支え合う」サヘル・ローズ編著
- 「21世紀の『女の子』の親たちへ」おおたとしまさ著
- 「これからの男の子たちへ」太田啓子著
- 「茶色の朝」フランク・パブロフ著 高橋哲哉メッセージ
- 「はじめて出会う短歌100」千葉聡編
翌週から朝の読書週間に入るタイミングでもありましたので、生徒の皆さんの感想には「自分はこの本を読んでみたい」という感想がたくさんありました。今日は、その集会記録の中からいくつかをご紹介します。
- 最初に「読書から人権を考える」と聞いた時は、私の普段読む本とは遠い感じがして、どの本も難しそうだなと思っていました。しかし、聞いている間に「この本聞いたことあるかも」「読んでみたい」などと思うようになりました。私が読んでみたいと思った本は、「茶色の朝」です。「茶色以外のペットは処分するように」という法律があるとこにびっくりしました。そして茶色以外の存在が認められなくなってしまう物語の展開がすごく気になりました。フランスの本ということで、新たな視点で読むことができるのではないかと思いました。(中学1年)
- 私はアンネの伝記は読んだことがあるのですが、「アンネの日記」は読んだことがなかったので読みたいと強く思いました。この日本では「平和ボケ」と言われるほど穏やかで、私はとても恵まれた環境で育っています。しかし、同年代の子達が私達とは縁遠い「迫害」にあっていたことに酷く胸が痛みます。しかし、現実を知らずして「可哀想」というのはあまりにも残虐で無責任だと思います。なので、もっともっと現実を知るためにも「アンネの日記」を読みたいと思いました。(中学2年)
- 私がぜひ読んでみたいと思った本は「支える、支えられる、支え合う」です。サヘル・ローズさんのお話をぜひ読んでみたいと思いました。たとえ他国の人であっても否定・避けるのではなく、思いやりの心を持つことなどが書かれているそうです。ぜひ、読んでもっと優しい心の持ち主になりたいと思いました。(中学2年)
- 紹介された10冊の本の中で最も興味を持ったのは「あの頃はフリードリヒがいた」という本です。ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害は以前から本を読んでもっと知りたい知るべきと思っていたのでこの本に特に興味を持ちました。仲の良い2人が人種の違いというだけで離れ離れになる状況や当事者の気持ちというのは私には全く想像がつきません。日本はアメリカなどの多民族国家、ヨーロッパなどの陸続きの国と比較すると外国から来た方の人数はそれほど多くはありません。私自身、外国からきた友達は殆どいない上日常生活においても外国の方を見かけることは少ないです。なのでよりそういった状況を想像するということは困難なのではないかと思います。しかし、校長先生がおっしゃったようにそうした環境においても「本」というツールを通せば疑似的にですが体験することができ当事者の気持ちを理解しやすくなりまた完璧にではないですが理解することが出来ます。私は「あの頃はフリードリヒがいた」という本を通して迫害される側ではなかったドイツ人の子の気持ち、迫害される側になってしまったフリードリヒの気持ち双方の感情を知り、考え、自分自身の視野を広げ色々なことをより深く考えたいと思いました。(中学3年)
- 「アンネの日記」完全版や、アンネをかくまってお世話し続けたミープさんの書いた「思い出のアンネ・フランク」もあると紹介の話のときに知って、読んでみたいなと思いました。校長先生がミープさんはアンネ以外にもかくまっている人がいて、それらを「人間として当たり前のことをしただけ」と言ったという話をしてくださったときに、その当たり前のことをするのが簡単ではなく、どれだけの勇気と覚悟が必要だったか、きっと私には想像できないほどだろうと思いました。(高校1年)
- 「夜と霧」は以前読んだことがあったので、その時のことを思い出しました。その本の中でフランクルが収容所で実際に経験したことが特に印象に残りました。それは、ナチスの選別によるもので、右か左どちらに進むかで生と死が決まるというものでした。フランクル自身は生き延びましたが、逆の方へ指示された人はその日のうちにガス室で無惨にも殺されてしまいます。この生死を分ける命の選択は、常に死と隣り合わせで生活していたことが分かると同時に、本当に何気ない日常へのありがたみを実感しました。(高校2年)
- 今回紹介してくださった本の中で「夜と霧」に一番興味を持ちました。私が人生のうちに訪れたい場所としてアウシュヴィッツがあります。ユダヤ人に対し、ひどいことをしたという事実はもちろん、そんなひどいことができてしまった人間の心理、やらされていた人の苦しみを、一人の人間として学んでおきたいからです。昨年、被爆地である長崎へ行った時、その地に立って初めて戦争の恐ろしさを身をもって実感したように、考えるだけではわからない、見えない部分が見えてくると思うからです。(高校3年)
人権について考える本として、ユダヤ人への差別を知りたいと思う人が圧倒的に多いなと感じました。西遠では、中学3年生の必読図書の一冊に「アンネの日記」がありますが、まだ3年生でも読んでいない人がたくさんいたことも今回分かりました。義務として嫌々読むのではなく、講堂朝会を契機に、興味を持って読む人が増えると嬉しいです。
読書や読書週間について、こんな意見を持つ人もいて、とても頼もしく思いました。
- 本は、ときに娯楽であり、現実逃避をするためのものでもあるかもしれない。しかし、それとは反対に、現実を知って学ぶことも、本の重要な役割だと思った。中学生になってから、放課後や、休日に本を読むことが減った。今は、朝読書のたった15分ぐらいしか、まともに本を読んでいない。しかし、今回校長先生にたくさんの本を紹介していただいたから、どれか読んでみようと思うし、今後読書の時間をしっかりつくりたいとおもった。(中学2年)
- 私はまだ高校生で、世界の問題を解決できる力は持っていません。しかし、高校生だからという理由で、それらの問題について知ろうとしないことは、学校に行きたくてもいけないような子を見て見ぬふりをしていることと同じだと思います。私は、国際的な問題を解決することに興味があります。その夢に近づくには、今は知ることを味方につけて行く必要があると思います。日本では、日本国憲法にて、天皇も国民も皆平等であることがうたわれている一方で、子供や女性、高齢者、障害者、アイヌ民族、そして同和問題など未だ解決されていない問題があります。解決しなければならないたくさんの問題がある中で、色んな方から1つの問題に目を向け、1人1人が知識を増やしていくことは苦しんでいる人たちを救うための力になると思います。明日からは読書週間が始まります。読書を語彙力や理解力などの国語の力につなげていくことはもちろん、もっとたくさんの世界の問題を知る中で、色々な考え方を見出していきたいと思います。(高校1年)
読書で人権を考えるという私からの提案に対し、真摯に応えてくれた生徒たちに、私は限りない可能性を見出しています。2022年の学びの中にも、彼女たちの可能性が花開く瞬間をたくさん発見できることを、私は確信しています。