小さな白板 第41週

図書館入り口に飾っている「小さな白板(ホワイトボード)」。2月7日~10日の第41週のラインナップをお届けします。

2月7日(月)  早春のレモンに深くナイフ立つるをとめよ素晴らしき人生を得よ   葛原妙子

先週、立春の2月4日に与謝野晶子の短歌を紹介しました。続いて、今週のスタートは、「早春」の葛原妙子さんの短歌です。レモンにナイフを立てる少女。レモンの爽やかな酸っぱさや香りが脳内に再生されます。レモンというと、私はやはり高村光太郎が最愛の妻智恵子の臨終を綴った「レモン哀歌」を思い出しますが、あの哀しいレモンの香りの詩とは対照的な、若さの象徴・生の象徴として描かれたレモン。「をとめよ素晴らしき人生を得よ」は、人生の先輩からのあたたかいメッセージに思われます。

2月8日(火) ガブリッチョなる怪獣を仕立てあげ小さきあなたを育ててきたよ  澤端節子

この短歌に出会ったとき、思わずフフッと笑ってしまいました。ガブリッチョという名前から、憎めない、愛らしい風体の怪獣を想像しました。そして、「そんなことしてるとガブリッチョが来るよー」と脅かしながら小さい子どもを優しく叱るお母さんが浮かびました。
子どもには、ちょっと怖い存在も必要です。悪いことをさせないための防波堤とでもいいましょうか。怖い存在があるからこそ「やってはいけないこと」が分かるのかもしれません。昔は閻魔様がその象徴でした。
私は幼い頃、テレビのこどもニュースで見る「なまはげ」が怖かった…。悪いことしてなまはげが来たらどうしよう、と本気で思ってました。
そして、私の子育て中のガブリッチョは「山のおじさん」でした。娘と息子はいつまで「山のおじさん」を信じていたのかな…。今度聞いてみます。

2月9日(水)  最後とは知らぬ最後が過ぎてゆくその連続と思う子育て  俵万智

9日は高校3年生のPTA学級委員の方々にお集まりいただき、卒業前の最後の会議がありました。卒業式まであと3週間です。本人はもとより、ご家族の皆様にはあっという間の6年間あるいは3年間だったことと思います。そんなご家族の皆様に宛てて。さらに、子供世代に親世代の思いを知らせたいなと思って、俵万智さんにご登場願いました。

2月10日(木)
淡くかなしきもののふる/紫陽花いろのもののふる道/母よ 私は知ってゐる/この道は遠く遠くはてしない道               三好達治「乳母車」より

2月6日のブログ「文学雑感」にも書きましたが、月9ドラマ「ミステリと言う勿れ」にこの詩が登場しました。せっかくなので、最終章を書いてみました。そしたら、この日、図書館で三好達治の詩集『測量船』を借りた生徒がいたそうです。月9恐るべし! その生徒が他にもたくさん三好達治の素晴らしい詩に触れてくれることを願っています。

☆  ☆  ☆

【おまけ その1】西陽の中で、久しぶりにシジュウカラを撮影できました。アクロバティックなポーズです。

【おまけ その2】今日2月11日は、「科学における女性と女児の国際デー」だと知りました。

科学者
エンジニア
宇宙飛行士・・・
STEM(科学、技術、工学、数学)の分野では、ステレオタイプや制度的な制約により、女性であることを理由にキャリアが妨げられ、夢が奪われてきました。
難民を含むすべての女性と少女に平等な機会を。

                     UNHCR駐日事務所さんのTwitterより

「難民を含むすべての女性と少女に平等な機会を」という UNHCR駐日事務所さんの主張に心から賛同します。「をとめよ素晴らしき人生を得よ」