先日のことです。図書館司書の水谷さんが「先生、『旅の絵本』の新刊が出たのご存じですか?」と声を掛けてくれたのです。非常に驚きました。なぜなら、『旅の絵本』シリーズの作者で画家の安野光雅さんが亡くなって、既に1年以上たっているからです。(その時のブログはこちら。)
だから、『旅の絵本』は9冊目の『旅の絵本Ⅸ』のスイス編で完結したと思い込んでいました。ご本人が亡くなって1年後に出版された最新刊『旅の絵本Ⅹ』はオランダ編だと言います。何はなくとも購入せねば!と、ネットで『旅の絵本Ⅹ』を注文しました。
我が家に届いた『旅の絵本Ⅹ』。帯にある「安野光雅さんからの贈りもの 安野さんが最期まで描き続けた『旅の絵本』シリーズの完結編」という言葉に、深くうなずきながら、母と二人で絵本を開きました。
オランダを訪ねたことは一度もない私ですので、オランダで知っているのは、風車とチューリップとアンネ・フランクの隠れ家ぐらいです。でも、オランダの港町や花畑の風景、見知らぬ町や村の風景は、私たち読む者を「知らない街を訪ねた旅人」として穏やかに包み込んでくれました。アンネもそこにいました。
巻末の「解説」の文章の前に、「本作品の原画は、安野さんの逝去後、アトリエから見つかりました。」と小さな活字で書かれていました。本当に安野さんからの贈りものだなあとしみじみしました。見つけて絵本にしてくれた関係者の方々にも感謝です。福音館書店さん、ありがとう!
コロナ禍が収まったら、この絵本の旅人のようにいろいろな街を訪ねてみたいですが、たとえ外国に行くことが叶わなくても、安野光雅美術館のある彼の故郷 津和野には、近い将来、絶対に行きたいと思っています。安野さんの優しい絵のタッチと、小さいものを愛する優しいまなざしを育てた津和野。『旅の絵本』完結編をめくりながら、心は津和野に飛んでいます。
裏表紙側の帯には、「生きているということは、旅をしていることのようだ。」という安野光雅さんの言葉が綴られていました。