小さな白板 第44週

2月から3月へ。図書館入り口の「小さな白板(ホワイトボード)」も44週を数えました。

2月28日(月)
  We must give peace another chance.
   (我々はもう一度平和にチャンスを与えなければならない。)
                  アントニオ・グテーレス(訳:根本かおる)

2月25日、ロシアのウクライナへの侵攻というニュースが世界中の人々の心を動揺させました。週明けの28日に紹介したのは、26日安全保障理事会後に発せられた国連事務総長アントニオ・グテーレス氏の言葉です。白板では一文を紹介しましたが、彼はもう少し長く発言しています。

The UN was born out of war to end war. Today, that objective was not achieved. But we must never give up. We must give peace another chance. Soldiers need to return to their barracks. Leaders need to turn to the path of dialogue and peace.
国連は戦争の経験から、戦争を終わらせるために生まれた。今日その目的は実現しなかった。しかし決して諦めてはならない。もう一度平和にチャンスを。兵士は兵舎に戻らなければならない。指導者は対話と平和の道に向かわなければならない。

                    国連広報センター所長 根本かおるさんのTwitterより

平和にチャンスを与える、という表現が心を打ちました。何とか平和を取り戻せないだろうか。今も心の中で繰り返している言葉です。「戦争に反対する」という言葉は、何もできないと思っている一人一人にもできる意思表明です。昨日の卒業式でも、そのことを話しました。平和教育を受け、いつも命や平和の尊さを学んできた西遠生だからこそ、ぶれることなく「平和にチャンスを」と発信していきたいですね。

3月1日(火)
僕は社会のあらゆる課題を二元論で捉えるという考え方が嫌いですし、この世の中に自分と関わりのない「他人事」なんて「ない」と思っています。これまで好きになった人や付き合ってきた人によく言われた言葉があります。「あなたは住む世界が違う」という言葉です。でも、僕は「僕もあなたも住む世界は同じ」だと思っている。必要なのは二元論で捉えることではなく、グラデーションで捉えることだと思っています。                  小佐野 彈

歌人の小佐野彈(だん)さんのことは、昨年12月の講堂朝会でも少し紹介しました。その時紹介した「はじめて出会う短歌100」(千葉聡編)という本の中に彼の一首があります。彼のインタビュー記事を見つけ、読んでいるうち、この「二元論ではなくグラデーション」「この世の中に他人事なんてない」という考え方がとても印象に残りました。自分に関係ないという一言で済ませてしまう風潮や、保身のためなのか八つ当たりなのかすぐに他者を攻撃してしまう、この社会の中で、彼の考え方は大事な考え方だと思いました。今、彼の歌集「銀河一族」を読んでいます。インタビュー記事もぜひお読みください。

3月2日(水) 貸した本に夢二のブックカバーかけ返してくれる君には敵わず   上田結香

昨年12月12日、朝日歌壇で見つけた上田結香さんの短歌です。素敵なお友達だな、と思いながら書き留め、卒業間近の高校3年生に送ろうと思い、白板に書きました。書きながら、ふと、あれ?「君」ってことは男性かしら…?と思い、ドキドキしました。ぜひ作者の上田さんにうかがってみたいです!
自分が貸した本に竹久夢二のブックカバーをかけて本を返してくれる人を「敵わない」と思う、人生にそういう存在の人がいるっていいなと思います。互いに刺激し合い、リスペクトしている関係なのではないでしょうか。西遠で育んだ友情も、一生にわたって、刺激とリスペクトのある友情であってほしいと思います。
上田結香さんは、昨日の卒業式で卒業生代表の平井さんの答辞に登場した短歌 「本当なら今ごろは」ってみんな言う本当なんてどこにもないのに の作者です。コロナ禍が明けたらぜひお会いしたい方です。

3月3日(木)
たとえ理解しがたいものごとに出会ったとしても、それでも理解しようとする姿勢こそが、いまこの危機の時代に必要とされていると思います。        斉藤 孝

『人生の武器になる「超」勉強力』(斎藤孝著 プレジデント社)の中にあった言葉です。「この危機の時代」とは一昨年からのコロナ禍を指していますが、今、平和の根幹が揺らいでいる危機にも、「理解しようとする姿勢」の必要性は同じだと斎藤孝さんから言われているように思います。

3月4日(金) フォルテとは遠く離れてゆく友に「またね」と叫ぶくらいの強さ 千葉 聡

いよいよ卒業し気が明日に迫った日、この短歌を紹介しました。高校3年生は、卒業式で、担任に名を呼ばれ、「はい」と返事をします。「またね」と叫ぶぐらいの強さを込めて…。式を前に、高3担任の岩崎先生がこの歌をクラスに紹介したそうです。それを聞いていたので、翌日の卒業式、岩崎先生ご自身が氏名読み上げの際に声を詰まらせてしまった、その気持ちが伝わってきて、壇上の私も泣きそうになりました。岩崎クラスの生徒たち、みんなフォルテの強さの返事でした。



千葉聡先生も、この歌を「サイエンスフロンティア高校の小さな黒板」に卒業生に向けて書かれていたことを、後で知りました。ちばさと先生のあたたかな字と優しい呟きにも感動し、「小さな白板」を始めたきっかけをくださったちばさと先生にまたまた感謝した次第です。

ちばさと先生、ツイッターのスクリーンショット掲載させていただきました。お許しください。

3月5日(土)
別れゆくあなたに この歌を届けよう 寂しい時に歌ってほしい 遠い空からこの歌を
                     「切手のないおくりもの」作詞:財津和夫

ちょうど、今日Eテレで「みんなのうた60周年」のファイナル番組が放送されていました。この「切手のないおくりもの」は「みんなのうた」の代表的な歌として紹介されていますし、紅白などでもスペシャルコーナーで歌われていますね。たくさんの人が口ずさんでくれることは、チューリップファン・財津ファンにはとても嬉しいことです。
卒業式当日、別れゆくあなたに向けて、「切手のないおくりもの」の5番を書きました。「みんなのうた」とほぼ同い年の校長からのプレゼントです。卒業生の皆さん、寂しくなった時、この歌をそっと口ずさんでみてください。いろんな人の笑顔がきっと甦りますよ。

寂しい時に歌ってほしい/遠い空からこの歌を

今日は、「学力調査研究会」主催の西中・西遠合同説明会が西遠で開催されました。ご参加の皆様、西遠のプレゼンを熱心にお聞きくださり、ありがとうございました。男女別学の特徴をお分かりいただけましたら幸いです。ぜひ、西遠への進学もご検討ください。

【おまけ】学園で撮った今週のメジロです。

明日からの新しい週は、中学生にとって音楽コンクールが行われる大事な大事な週です。頑張れ、中学生! クラスのコラボレーションを存分に見せてくださいね。