暮れの郷愁

昔々、と言っても平成3年ぐらいのことだったでしょうか。
暮れの大掃除の時に、懐かしいおもちゃに出会って、片付けの手が完全に止まってしまったことがありました。

押入れの片づけをしていていた時のこと、
自分が子どもの時に使っていた積み木を発見してしまったのです。
真四角の積み木のおもてに絵が描かれ、裏にはひらがな一文字が書かれた「文字積み木」です。
娘や息子に贈られたミッフィーちゃんの文字積み木に比べたら、
メルヘンチックでも何でもない、いささか時代遅れの絵や字体でした。
いかにも「昭和」の絵と字です。
このひらがなはどんな絵だったっけ?と、次々に字と絵を確認していくと、
「と」の字の積み木に出会いました。
ひっくり返すと、そこには「トンボ」の絵が描かれていました。
かなり写実的なトンボの絵。
今の子が見たら、「虫、キライ!」と言って放り出されそうな絵です。
しかし、私には、とてつもなく懐かしい絵でした。
「ともよのとの字は、とんぼのとの字」
…ああ、そうだった、そう覚えたんだった。
私はトンボをまるで自分の分身みたいに感じて、親近感を持ってトンボを見ていました。
その原点が多分この文字積み木だったのです。
暮れの押し入れの前で、しばし郷愁に浸った私でした。
昔の自分に出会えたような、懐かしい思いに包まれて、積み木はもちろん捨てずに終わりました。
子育てに大わらわの頃の懐かしき思い出です。
みなさんには、懐かしいおもちゃはありますか?
お子さんが小さい頃のもの、ご自身の懐かしいもの、エピソードの詰まった記念のもの…大掃除の最中、ふと手を止めてしまう、そんな「何か」に出会うかもしれませんね。