8月に入り、「戦争」「平和」をテーマにしたテレビ番組や新聞記事が多くなってきました。今日は、私が今年出会った「戦争を考える絵本」を3冊紹介します。
「猫は生きている」 (作:早乙女勝元 絵:田島征三 理論社)
今年5月15日の当ブログ「絵本と冊子のお話」でも紹介した絵本です。今年5月10日、90歳で亡くなられた早乙女勝元さんは、1945年3月10日の東京大空襲を体験しました。早乙女さんは戦後、大空襲の体験者に聞き取りを行いました。その丹念で膨大な聞き取りが、やがて「東京大空襲」「東京が燃えた日」といった本になりました。そして、早乙女さんは、東京大空襲をテーマにした絵本も作られていたのです。
「猫は生きている」は、戦時中貧しいながらも懸命に生きてきた家族とその家に住みついた野良猫の親子が迎えた1945年3月10日のお話です。これでもか、これでもかというように、無数の焼夷弾が降り注ぎ、容赦なく炎が襲ってくる大空襲の描写。田島征三さんの絵の迫力もあって、息もできないような苦しさ、追いつめられる恐怖を感じながら、私はページをめくりますが、なかなか夜が明けません。東京大空襲の夜の長さは、体験した人々にとっては絶望的なほどだったのだろうと思い、本当につらくなりました。
この絵本は西遠の図書館の絵本コーナーにあります。生徒の皆さん、小学生の図書館会員の皆さんは、ぜひ図書館で手に取ってみてください。
「そらいろ男爵」 (ジル・ボム文 ティエリー・デデュー絵 中島さおり訳 主婦の友社)
この「そらいろ男爵」は、7月4日のブログ「大人にもおすすめの絵本」の中で紹介しました。柳田邦男さんが「元気が出る」「泣ける」大人絵本として紹介した中の1冊です。絵本の帯には、第1次世界大戦開戦から100年目、2014年にフランスで刊行。「サン=テグジュペリ賞 絵本部門受賞作」と書かれています。
今から100年ほど前のこと。とぼけた風貌のそらいろ男爵は、自分でそらいろに塗った飛行機で楽しく空を飛んでいました。ところが戦争が始まり、男爵も飛行機で戦争に参加しなくてはならなくなりました。そこで爆弾の代わりに、家にあった百科事典をはじめとしてたくさんの本を落としました。すると、敵兵たちは本を読み始め、その日、戦いはストップしてしまいました。男爵は、だんだん落とす物を考え始めました。すると、遂に戦争が終わり、男爵は勲章をもらいます。さて、男爵は何を落としたのでしょう。
この本なら、戦争がテーマであっても、子どもたちも楽しく読めるでしょう。小さい頃から、こんな絵本がそばにあったら、誰も戦争なんてしなくなるんじゃないかと思います。
「戦争をやめた人たち」(鈴木まもる 文・絵 あすなろ書房)
「戦争をやめた人たち」は、今年の5月末に刊行されたばかりの絵本です。サブタイトルは「1914年のクリスマス休戦」とあります。そして、帯には「戦場で本当にあった奇跡のような実話」と書かれています。
絵本を開くと、優しいタッチの絵がどこまでもあたたかく、どこまでも優しく続いていました。ページをゆっくりとめくっていくと、「実話」という重みも加わって、心に染み入ってくるような静かな感動がありました。
絵本の最後に「制作ノート」として、作者の鈴木まもるさんの文が寄せられています。「この絵本の、あとがきの絵を描いているときに、ロシアがウクライナに侵攻を始めました。また戦争を始める人間がいる現実に愕然としつつ、戦争することよりも強い、人の優しさと想像力が描きたくて、絵を完成させました。(後略)」…この文章を読みながら、私もまた「人の優しさと想像力」、そして「人と人が出会うことの大事さ」「平和な世界を築く創造力」を信じ、それを西遠でたくさんの生徒に伝えていこうと心に誓いました。
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「戦争」をテーマにした絵本を今日は3冊紹介しました。
皆さんは、「戦争」「平和」を描いた絵本と言うと、どんな絵本が思い浮かびますか?
みなさんのお気に入りの絵本もぜひ教えてください。