8月10日にテレビ朝日「大下容子のワイド!スクランブル」12時台に放送された松岡修造さんのコーナー。高校生がウクライナやロシアのことをどう捉えているのかという特集で、西遠女子学園の授業や高校1年生の意見が取り上げられました。2週間以上たった今でも、大変大きい反響をいただいております。お電話やお手紙をいただいたり、今日の帰りにはご近所の方から「あの番組は素晴らしかったよ」とお声を掛けていただきました。
学園に松岡修造さんをお迎えしたのは7月21日の午後でした。実際にお会いした松岡さんはとても真面目で真摯な方でした。ウクライナへのロシアの侵攻について、戦争と平和について、深く考えて、自らも悩まれていることが分かりました。授業では、生徒一人一人のプレゼンや意見発表に対し、真剣に熱心に耳を傾けてくださいましたし、生徒たちが緊張しないように気づかいも随所に見せてくださいました。たくさんのカメラの中で、生徒たちがいつもの授業のように自然体で意見交換ができたのは、松岡さんのお人柄によるところが大きかったと思います。
また、私も松岡さんと恐れ多くも「対談」させていただいたわけですが、大変熱心に聞いてくださいましたので、とてもお話しやすかったのを覚えています。「君たちはどう生きるか」のことや中村哲さんのこともお話できました。話題を丁寧に深めてくださり、決して切り上げようとなさらない松岡さん、背も心もとても大きな、素敵な方でした。
番組では、生徒たちが等身大の自分の言葉で真剣に語り合うことができました。生徒たちの発表した意見についても、スタジオ出演者の皆様に幾度も取り上げていただき、特に「自分の幸せが他人を侵害してしまっていないか、慎重に考えなくてはいけない」という生徒の意見を佐々木アナウンサーが取り上げてくださいましたが、10代の真剣な声を大人の皆さんが拾い上げてくださることに、生徒たちも安心や自信を持ったことと思います。若者を馬鹿にしたり茶化したりすることなく、生徒たちを尊重してくださる番組の姿勢は、とても嬉しいものでした。
太平洋戦争中、浜松が全国の都市の中でも大変大きな空襲の被害を受けていたことも、番組を通じて初めて知った方もいらっしゃったと思います。コメンテーターの柳澤秀夫さん(我が家一同、「あさイチ」ご出演の頃から大好きでした!)が、「我々にとっての1945年8月」に対して「浜松にとっての1945年の4月・5月」とコメントしてくださった時、日本各地にそういう節目として記憶される時があったのだと思い至りました。東京大空襲は3月、大阪への空襲は4月。 西遠生には先輩たちの亡くなった4・5月の爆撃が節目ですが、浜松への一番の大空襲は6月18日でした。この時のご遺族の方には、1945年6月が忘れ得ぬ節目だったことでしょう。 そして、柳沢さんがおっしゃったように、その節目の日の前に起こっていた「歴史」もまた知っていかなくてはいけないのだと思います。
また、杉村太蔵さんが「今は、言い負かすとか論破することが良いような風潮があるけれど、相手の意見を聞き、自分の意見を深めることが大事」ということをおっしゃいましたが、まさに大人が議論や討議の形を今歪めていることも、大人の一人として反省しなくてはいけないと思いました。さらに萩谷麻衣子さんが「親も間違っているかもしれない、大人も常に学んでいかなくていけないのだ」と発言されてことにも、大人の一人として大変共感しました。あの番組は、生徒の世代よりも、むしろ我々大人のためにこそ大事な番組だったのだと、今更ながら思います。
29日の授業はじめの式でも、この番組に触れ、戦争と平和について考えたいと思います。戦争・平和という大きな問題は、簡単に結論を出せることではありません。しかし、逃げずに、真剣に悩む学園でありたいと思います。
【追記】Twitter上でも、たくさんの反響がありました。その中で「西遠女子の先生や生徒さんにも観てもらえたらな」という呟きがあった映画「スープとイデオロギー」、先日鑑賞いたしました。とても素晴らしい映画でした。多様性の受容、朝鮮半島の特に済州島の悲劇、親の老い…。殊に、監督のお母様の数奇な人生を思うと、戦争が分断したものの大きさに言葉もありませんでした。