小さな白板2022 第21週

秋休みに入る前、9月最終週と10月最初を飾った「小さな白板(ホワイトボード)」。学園祭の2日間は図書館が「関係者以外立ち入り禁止」箇所であったため、10月1・2日はありませんでした。9月26~30日、そして、10月3日を振り返ります。

9月26日(月) 誰を乗せてゐるか九月の雲の船がわたしの窓にしばらく泊る 荻原裕幸

荻原裕幸さんの歌集「永遠より少し短い日常」には、私の心に響く歌がたくさんありました。9月のうちにこの短歌を、と思い、白板に書きました。
9月は空も雲もきれいです。でも、すぐに夕暮れがやってきます。
九月の雲の船が私の家の窓に停泊する、という情景を想像し、素敵だなあと思いました、誰を乗せているんだろう、その雲の船。しばらく停泊すると言っても、ほんの一時だろうし、その儚(はかな)さもまた味わい深いですね。

9月27日(火)
 手を振って「またね」と言う子「また」と「ね」の間にわずか沈黙を入れ  千葉聡

学園祭準備で忙しい9月、早い日暮れはちょっと切ないですね。友達同士、帰りの道で「またね」と言い合う光景は日々繰り返されますが、それぞれニュアンスは違うはず。「また」と「ね」の間にほんのわずかの沈黙が入るだけで、その子の心の奥の去りがたい思いが届くような気がします。それにしても、ちばさと先生はどうしてこんなに繊細に子どもたちの心の声を感じ取れるんだろう。
この短歌が収められた「飛び跳ねる教室」は、上菅田中学校でのちばさと先生の日々が歌われています。MRI検査を待つ病院のベンチでこの本を読んでいた昨年のことを思い出します。この本のおかげで、MRIを受けている間、閉所や機械音への不快感は全くなくて、頭の中で下手なりに何首も短歌をひねりだしていたオオバでした。ちばさと先生に感謝です。

9月28日(水)  秋ともしばかものよと詩に叱らるる    瀧上裕幸

2021年12月12日の朝日俳壇より、 瀧上裕幸さんの俳句を。今年1月2日のブログでも紹介した俳句です。

「秋ともし」とは「秋の夜の澄明な感じの灯」の意味の秋の季語です。「ばかものよ」とは、茨木のり子さんの詩「自分の感受性くらい」の一節。詩のラスト「自分の感受性くらい/自分で守れ/ばかものよ」という厳しい口調には、自分自身の内面の自由や権利を人のせいにして失くしてよいはずがない、という作者茨木のり子さんの強いメッセージが込められています。愚痴や言い訳でごまかしてしまう自分の弱さを、私たちは、時々茨木さんに叱ってもらわなくてはなりませんね。

瀧上さんの俳句は、昨日も「朝日俳壇」にありました。
  アフガンの人身売買聞く夜寒  (石川県能登町)瀧上裕幸 
            2022年10月9日朝日俳壇「長谷川櫂選」より

9月29日(木)  放課後の教室に射す落陽は隅の机を優しく抱いた  古沢広成

秋の短歌は誰もが心優しくなれる感じがします。この短歌は、第1回短歌研究ジュニア賞の入賞作品です。教室の隅に目をやる作者のあたたかい視線を想います。学園祭準備に忙しくてそんな感傷に浸ってる余裕がない西遠生の皆さんに宛てて、この短歌を書いてみました。ふっと日暮れの教室で思い出してほしい一首です。

9月30日(金) 
 あのね 大好きだよ/何万回も 伝えよう/温かく増えた想いは/全部 アイノカタチです
                   MISIA「アイノカタチ」作詞:GReeeeN

9月最後の白板は、口ずさめる歌にしました。白板を見て、そのあと、生徒の皆さんの脳内をこの歌がエンドレス再生されてたら嬉しいな、と。この歌、私は大好きです。初めて聴いた時、なぜだか涙が出ました。頭の中にMISIAさんの歌声が響いていると、元気が出ます。というわけで、学園祭ラストスパートの皆さんにエールをおくる気持ちで書いた詩です。

10月3日(月)
 I hear babies cry / I watch them grow / They’ll learn much more /
 Than I’ll ever know / And I think to myself / What a wonderful world
     ルイ・アームストロング「この素晴らしき世界」より
     作詞作曲:ジョージ・ダグラス(ボブ・シール)ジョージ・デヴィッド・ワイス

10月最初の白板は、ルイ・アームストロング(通称サッチモ)の「このすばらしき世界」から。これまた大好きな曲です。かつてオーケストラ部もこの曲を演奏していましたね。講堂からこの曲が流れてくるたび、感激していたものです。
この歌は、誰しも聞いたことがある名曲でしょう。聞けば聞くほど味わい深くて、♪What a wonderful world♪のサッチモの嗄れ声が心に響いて、リピートしてずっと聴いていたい曲の一つです。昨年は「カムカムエブリバディ」でサッチモ(サッチモちゃんと言いたくなる…)にスポットが当たったので、ぜひぜひ皆さんもこの What a wonderful world を秋の夜長に聴いてみてください。
【余談】私のこの歌との出会いは、20代。ホンダシビックのCMでした。素敵な映像とこの曲のおかげで、初めて「この車が欲しい」と思い、数年後にシビックを購入しました。(消費行動に駆り立てた、すごいCMというか、オオバがCMにまんまと乗らされたというか…笑)。でも、私にとって、ベビーシートを乗せ、チャイルドシートを乗せ、保育園の往復を共にしてくれた、愛すべき1台でした。

さて、1週間の秋休みも今日で終わります。明日10月11日は、後期始業式。そして、国際ガールズデーです。元気なガールズとの再会が楽しみです。