朗読を聴く夕べ

積志小学校向かいにある「珈楽庵」で行われた「朗読の夕べ」に出かけたのは、学園祭前の9月28日のことでした。コロナ禍前に何度かお邪魔していたことがある「朗読の夕べ」ですが、しばらくぶり、そう、実に3年ぶりにお邪魔しました。

朗読の集いには「堤腰和余ひとり語り」とあります。卒業生で、私にとっては放送委員の先輩でもある 堤腰(つつみこし)和余さんによる朗読会なのです。この夜は、芥川龍之介の2つの作品を情感あふれるお声で朗読してくださいました。姫の声も、殿方の声も、堤腰さんが次々とその人物を重厚に作り上げていきます。

高校1年生の現代文の授業で何度も扱ったことのある「羅生門」を、全編朗読で聴いたのは初めてでした。短編とはいえ、全編を読めば30分くらいかかります。堤腰さんの集中力にも驚かされました。そして、下人の声、老婆のうめき、暗く不気味な背景も、堤腰さんの声色だけで平安時代の一夜が再現されていることに、何より感嘆したのでした。そこに映像など何もないのに、声の芸術に聞きほれた夜でした。

堤腰さんは、第111回創立記念コンサートで、学園の生徒たちを朗読の世界に誘ってくださいました。朗読の魅力を知った人も多かったことでしょう。今学園に集う生徒たちにも、堤腰さんの朗読を近い将来聴かせてあげたいと思っています。どうぞお楽しみに。