小さな白板2022 第25週

図書館入り口の「小さな白板(ホワイトボード)」、第25週は10月末日からスタート。深まる秋を噛みしめています。

10月31日(月) 
 バスを降りるとき黙礼をする少女ゐてくらやみ港北車庫前しづか   西巻 真

西巻真さんの歌集「ダスビダーニャ」をこのブログで紹介してから1年がたとうとしています。この短歌も出会ったときから好きで、なんとなく西遠生もこんな感じかなと思ったりして、初冬の頃に紹介したいと思って約1年温めていました。港北車庫前というバス停とは違うけれど、暗くなったバス停に降りた女子生徒が家路につくシーンは、ここ浜松にもありそうな秋の終わりの光景として私の胸に刻まれました。

11月1日(火) 地球儀の陸地を区分する線に人の争ふ来し方が見ゆ   堀川弘

10月30日の「朝日歌壇」に素敵な短歌はたくさん掲載されていましたので、ここから3日連続で紹介することにしました。最初のこの日は、平和について考えさせられる一首。国境の線に人と人・国と国の争いの歴史があります。地球という星にそんな線は本当に必要なのだろうか。ロシアが一方的にウクライナに引いた国境の線は、これからどうなっていくのだろう。・・・そんなことを考えずにはいられません。

11月2日(水) 年古りても大切な若き友三人アンとアンネと草原のローラ  大塚千晶

読書週間にふさわしい一首ですね。「赤毛のアン」と、「アンネの日記」のアンネと、「大草原の小さな家」のローラが、この人の心の中にいつもいます。作者が年をとっても、その3人の少女はずっと少女のままです。思えば私も「智恵子抄」の智恵子さんの年齢をとっくに飛び越えて今ここにいます。けれども、名作の主人公たちがいつでも心に住んでいるって、それこそ読書の醍醐味だと思いませんか? この短歌も朝日歌壇10月30日掲載作品です。

11月4日(金) 
 写真映えするとろふわのオムライス食べつつ食べたい母のオムライス  松田梨子

松田梨子さん・わこさんの姉妹は朝日歌壇の常連さんです。もう就職した梨子さんが、オムライスから母への思いを歌いました。インスタ映えする商品よりも、家族の手作りのオムライスが恋しいと知ったら、ご家族も嬉しいでしょうね。それが家族の確かな絆とも言えるでしょう。

11月5日(土) 
 お弁当づくりは小さな箱のなか美味しい平和をとじこめること   小林瑞枝

朝日歌壇2022年10月23日で出会った短歌です。お弁当にも「平和」の心が込められているのだなあと感嘆しました。「美味しい平和」っていいですね。「親子で語る」が行われる日に、この短歌を選びました。お弁当を作ってくださる家族には感謝を、自分でお弁当作りをしている生徒にはお弁当作りの気概や奥深さを感じてほしい一首です。

深まりゆく学園の秋をどうぞ。