3人の女性 ~高校講堂朝会~

本日1時間目の高校講堂朝会では、「3人の女性」を取り上げました。と言っても、いきなり3名の女性の名を挙げたわけではありません。最初にお話ししたのは、昨日校長机に置かれた新聞のことでした。

日本経済新聞第2部「高校生向け特別版」が本日全校生徒に配られることになっており、昨日の夕方、教員室の私の机にも1部が配られてあったのです。そこには微笑む池上彰さんの写真と「未来を拓く力」という言葉がありました。西遠の教育目標「未来を拓く女性の育成」と大いに関係しますので、今日の講堂朝会はこの池上さんのメッセージを紹介するところから始めました。

池上さんは、この記事の中で、「人生には予期せぬ事態を乗り越える力も必要」と説いておられます。そして、その力を発揮するためには「文理融合の姿勢を持つ」ことが大切であるとも述べています。予期せぬ事態を乗り越えていくには、文理の壁を破る知識と視点が欠かせない、と。

そこで、昨日のブログにも登場した本「ウーマンズスタイル100」を取り上げました。

今回高校生の皆さんに紹介したのは、左の紫色の本「日本の女性偉人たち」です。表紙に、白く小さな字で100名の名前が書かれているので、読み上げてみました。生徒には、知っている偉人が何人出てくるか指を折りながら聞いてくださいね、と指示。さて、高校生たちは、100名のうち何人知っていたでしょうか。

この100名の女性の中から、私が今回取り上げたのは3人の女性です。

  • 茨木のり子(詩人)
  • 猿橋勝子(科学者)
  • 中満泉(国連軍縮担当事務次長)

茨木のり子さんは、凛とした厳しい詩を書く詩人です。「自分の感受性くらい」はあまりにも有名ですね。戦争に青春時代を奪われた者として真の平和を希求する思いがあることに加えて、本には、48歳の時に理解ある伴侶を亡くし、深い喪失感を持ったことがつづられていました。本には書かれていませんでしたが、伴侶を亡くした後の茨木さんが打ち込んだことを、生徒の皆さんに紹介しました。それは、韓国の女性詩人との交流を通じ、ハングルを習い、彼女の作品をはじめとした韓国の詩を日本語に翻訳したという彼女の後半生です。自ら、人と人を結ぶために努力を重ね、国と国とをつなぐ架け橋のなろうとした茨木さんの生き方は、生徒の皆さんにどう届いたでしょうか。「世界で生きる力」を持ってほしい皆さんには、ぜひ参考にしてほしい生き方です。

2人目の猿橋勝子さんは、科学者として、後進の女性科学者を支える活動を始めた女性です。「猿橋賞」という名の賞をご存じですか?女性科学者に贈られるこの賞は、日本の女性科学者の活躍の場が少ないことを憂いた猿橋さんが自ら設立したものでした。科学者の地位向上に努めた猿橋さんは、「科学者は同時に、哲学者でなくてはならない」とも述べていらっしゃいます。まさに文理融合の実践者です。

3人目は、中満泉さん。講堂の舞台から、何度も紹介したことがありますね。彼女が2020年、国際ガールズデーに「15歳の私へ」と題した手紙を発表した時、私はこの手紙を読み上げました。その時の生徒の感想をちょっとご紹介します。

  • 中満泉さんの手紙を読んだ時に、「ちょっと周りと違うことを考えていたり、やろうとしても、それは恥ずべきことではないし、素晴らしいこと。努力すればなんでも可能になることを信じて、決して疑わないで」というところが心に残りました。私は、部活の時などに、この方が良いのではないかと周りと違うことを考えても、みんながこれと言っているのでそれが正しいのだと思い、自分だけ違って恥ずかしいなと思うことがありました。中満さんのこの言葉を聞いて、意見を言わなかった自分が一番恥ずかしかったのではないかと気づきました。
  • 中満泉さんの「15歳の私へ」の手紙の言葉に、とても勇気づけられました。男女差別がまだ残っている中、2・3年後には女子だけではない社会に出ていくと思うと、不安です。でも、「努力すれば何にでも可能性があることを信じて」という言葉を信じて、今は将来に向けて目の前にある勉強をしっかりしようと思いました。「教育は最大の武器」という言葉を心に刻んで、頑張ります。               2020年12月10日のブログより抜粋

中満さんを取り上げたのは、猿橋さんと逆に「誰かの背中を追って仕事を極めた女性」として紹介したかったからです。中満さんにとって、目標だった女性は緒方貞子さんでした。誰かがファーストペンギンになり、 猿橋さんのように、 そのあとに続く人々に対し明かりをともす。その明かりが今度は、緒方さんから明かりを受け取った中満さんのように、道を太く丈夫にして歩む女性を作っていくのです。

この「ウーマンズスタイル100」を監修したヤマザキマリさんもまた魅力的な女性です。つながっていく女性たちのバトン。生徒の皆さんにもぜひこのバトンが渡っていってほしい。そのために、あらゆる出会いを大切にしてほしいと思います。

学園の秋の色はどんどん濃くなっています。高校生の皆さんも今日の講堂朝会からいろいろ考えてくれたらうれしいです。皆さんからの集会記録を楽しみにしています。