小さな白板2022 第32週+α

長らく休養させていただいておりましたが、本日公務に復帰いたしました。多方面にご迷惑をお掛け致しまして、申し訳ありません。また、ご心配くださいました皆様に、心より御礼申し上げます。

仕事納めの本日ですが、やっと学校に戻ることができ、紅葉が散ってしまったことに休んでいた日々の長さを感じ、生徒と久しぶりに交わす挨拶に心躍りました。やっぱり学校はいいですね。教員玄関前のロウバイもたくさん咲いていました。ロウバイの甘い香りも、嬉しかったことの一つです。

先週は、「小さな白板」29日から23日までの予定でしたが、心ならずも21日の分までしか書くことができませんでした。2022年最後の歌を決めてあったのに…、幻となってしまいましたが、最後にその短歌も紹介させてくださいませ。

12月19日(月) 
  落としものコーナーに一つものが増え持ち主はものに忘れられてく  千葉聡

年末の慌ただしさの中で、落とし物のガラスケースに収容されていく落とし物たち。私も生活課長をしていた時、あのガラスケースの係を務め、主が名乗り出てこない落とし物たちの多さに心痛めたものでした。この短歌に出会ったとき、落とし物の方が主人を忘れていく、持ち主は忘れられていくという発想にドキッとしました。忘れられちゃだめだよ!と言いたくて、この短歌を週明けに選びました。

そしたら、本家の千葉聡先生が、12月20日のTwitterで「落としもの」から始まる短歌を紹介してらしたのです。わ、偶然に同じ歌!?と思ったら、…違いました。「落とし物一つひとつが持ち主を待つように今冬の陽を受く」(相澤芯)という歌。ちばさと先生も、ご自分の落とし物を見つけられたそうです。心優しきちばさと先生の、落とし物への思い、生徒たちへの思いに、しばし感じ入りました。

12月20日(火) 
  亡き父が「よんでごらん」と買いくれし『アンネの日記』いま孫が読む  山田道子

2022年11月13日の朝日歌壇に掲載されていた短歌です。今は亡きお父様から作者へ、そしてお孫さんへと、読み継がれていく一冊の本。『アンネの日記』を勧めてくださるお父様、素敵ですね。そして、それが長い年月を経て、また次の世代に渡っていく…。静かな静かな家族の歴史を歌ったすてきな短歌に出会えたなあと思いました。

12月21日(水) 
  妹と買う色違いのワンピースこうしておばあちゃんになりたい  松田梨子

姉妹の楽しさがこんなに遠大に語られる短歌があるんだな、と嬉しくなった一首です。 松田梨子さん、わこさんの姉妹の歌は、毎週のように朝日歌壇に登場します。この歌は朝日歌壇2022年10月9日掲載。姉妹いつまでも仲良く歳をとりたいものですね。

この短歌を20日の夜に白板に書いてから帰宅し、そのあと発熱し、お休みすることになってしまいました。22日、23日の短歌も用意してありましたが、幻に終わりました…。せめて、2022年最後に紹介しようと12月23日に用意してあった短歌を、紹介させてください。

12月28日(水)  遙かなるものの光を受けながら青を湛ふる地球と思ふ   内藤 明

今日の夕方、白板に書いて校長室に飾ってみました。 今年最後の歌の写真が斜めになっちゃったところは、病み上がりということでご容赦ください(いえ、きっと私のずぼらな性格のせいです)。

この短歌に出会って、地球という青い星の美しさを改めてかみしめました。2022年、波乱に満ちた1年でした。自然破壊やコロナウイルスの蔓延、歪んだ差別意識や人権蹂躙、そして戦争の継続の中で、地球は2023年を迎えるのでしょうか。

はるか彼方から来る光を受けて青さを湛(たた)える地球。この貴重な生命ある星の住人として、私たちは未来を考えていかなくてはならないと思います。昔、♪青い地球は誰のもの 青い地球は誰のもの♪という歌がありました。青い地球は決して人間たちだけのものではないはずです。

2022年も、図書館入り口の小さな白板(ホワイトボード)と出会ってくださり、ありがとうございました。2023年もたくさんの短歌や俳句、詩や名文を紹介していきたいと思います。皆様の心に少しでも潤いや幸せが届きますように。