小さな白板2023 第4週

図書館入り口の「小さな白板(ホワイトボード)」、テストがあった第4週も毎日掲げておりました。第4週のラインナップです。

1月23日(月)
  わたしおこるときもあるしわらうときもあるしエプロンつけるときもあるし
                     高橋和那

1月21日の当ブログで紹介した猫の表紙の月刊誌「短歌研究」。早速この「短歌研究」2月号に発表されていた「短歌研究ジュニア賞」から一首紹介しました。
高橋和那ちゃんは3歳。第三回短歌研究ジュニア賞【小学生の部】で、みごと金賞を獲りました。私が見た限りでは最年少だと思います。もちろんご家族を通じての投稿でしょうが、うたごころのある3歳の和那ちゃん、自己主張がとっても素敵で、一瞬おませな和那ちゃんが眼の前に現れたような気持ちになりました。

1月24日(火)
  ひさかたのひかりをはなつ札に手を伸ばすわたしを待っている札    天野慶

「短歌研究」2022年2月号に掲載されていた天野慶さんの作品群は、競技かるたがテーマになっていて、とっても迫力のある短歌が揃っていました。 以前は、学園の1月と言えば、かるた大会が定番の行事でしたが、コロナ禍の中で遠ざかっています。せめて、短歌の世界で競技かるたを味わってもらいたいと思い、2日連続で天野さんの短歌を紹介することにしました。

「ひさかたの」は「光」の枕詞。「しつこころ」の札が光って私を待っている、という表現、すごく分かります! 次の上の句が読まれる瞬間の緊張と集中を思い出します。

1月25日(水)
  これはもう戦いよりも札という獲物を狙う狩りなのだった   天野慶

競技かるたがテーマの天野慶さんの短歌から今日も一首。「戦い」ではなくもはや「狩り」と評する競技かるたの真剣勝負。表現がおもしろいなあと思いながら、白板にこの短歌を書き写したのですが、書いていたら、「けものへん」が3回も出てきてびっくり。百人一首と獣は一番縁遠いような存在なのに、何やら競技かるたの世界が血なまぐさい空気を醸し出しているようです。私は、かるたの大会の一言も漏らすことが許されないあの緊張感をまざまざと思い出しました。獲物を狙う狩り…。うーむと唸った一首です。

1月26日(木)
 初めてのみどりご妻から受くるごとくメッシはワールドカップを抱けり  
                         篠原俊則

1月22日の朝日歌壇掲載の短歌です。この日の歌壇には「サッカーワールドカップ」を扱った短歌が何首かありました。メッシがワールドカップを抱いたその表情が「みどりごを抱くごとく」か、確かにそうだったなあ…と決勝戦の後の風景を思い浮かべました。どんな場面も五七五七七にできるのだなあ、と改めて短歌の可能性にどきりとさせられました。

1月27日(金) 
  手袋を嚙んで外してもういちど嵌めるときには指を使った   鈴木晴香

私としたことが、この日は写真を撮り忘れてしまいました…。

「手袋」のことは先週ブログで少し触れました。最近の生徒はあまり手袋をつけていないようですが、セーターの袖を伸ばして手を隠しているような姿より、手袋をしてキリッとしていてほしいなあと思います。
でも、確かにこの歌のように、手袋の取り外しは面倒です。噛んで外した手袋を、嵌(は)めるときには歯ではなく指を使う、誰もが身に覚えのある仕草かも、と我が身も省みてニヤリとしてしまった短歌でした。

1月28日(土)
 私はね、正解導く道具じゃない。君の答えを書く道具だよ。  福岡佐和子

「私」とは誰? 鉛筆かな、シャーペンかな? テストの時に鉛筆を転がして答えを決めたりされたら、鉛筆の方もえらい迷惑ですよね。答えを決めるのはあくまで鉛筆を使う人間の側。それを書く仕事こそ鉛筆の使命です。

この短歌の作者は中学2年生の福岡佐和子さん。これも第3回短歌研究ジュニア賞の中から。【中学生の部】入選作品です。

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1月もあと2日で終わりです。寒さもそろそろ峠を越える頃でしょうか。立春はすぐそこです。