3月3日、創立記念日

桃の節句の3月3日は、西遠の創立記念日です。今日は、「第117回創立記念式」そして、「記念公演」が行われました。

PTA会長様、同窓会長様のご臨席を賜り開会した創立記念式では、「校歌」を2番まで斉唱すると共に、4年ぶりに「岡本巌先生に捧げる歌」斉唱、そして「創立讃歌」斉唱を行いました。歌うことができるってやはり素晴らしいですね。久しぶりに歌うと、声は出にくくなってしまっているし、歌詞もうろ覚えで焦ってしまいますが、学園の歌をこうして皆で声を合わせて歌うことのできる幸せを噛みしめる式となりました。

「式辞」でお話したのは「典雅」「荘重」そして、「学園の歴史と伝統」についてです。西遠の先輩たちが気づいてくれた「歴史と伝統」は過去の遺物ではなく、「指針」です。そのプライドを受け継いで、「西遠生たちよ、エレガントたれ」と呼びかけました。

PTA会長の杢屋様からは「100年続く企業は少ない。100年歴史が作られてきたことを噛みしめ、その歴史に恥じないよう、凛とした女性であれ」とのご祝辞をいただきました。

同窓会長の二橋様は、ご自身の心に残る本として「泣いた赤鬼」(作:浜田廣介)を紹介しながら、「西遠には立派な図書館があり、本たちが皆さんを待っている、心に残る本を一冊でも見つけてほしい、そして、街で出会ったら、私に『こんな本を見つけました』と声を掛けてほしい」とお話しくださいました。

杢屋様、二橋様、本日はありがとうございました。ご来賓のお二方に心より御礼申し上げます。

式典の最後は、生徒代表による「誓いの言葉」です。高校生徒会長は事前に岡本富郎先生の『黄金の鋲』を読み返し、誓いの言葉を完成させたそうです。新型コロナウイルスに翻弄されながらも今年度チャレンジできたことを振り返り、「学園を育てるのは私たちである」として、新たなる前進を誓ってくれました。とても力強い「誓い」でした。

第2部の講演は「堤腰和余 朗読会」。卒業生で朗読家の堤腰様による朗読が、小説やエッセイの世界を私たちの頭の中に作り上げてくださいます。

芥川龍之介の「トロッコ」は、かつて中学1年の国語の教科書に載っていた小説です。堤腰さんの張りのある声で朗読が始まると、懐かしさと新鮮さを同時に感じながら芥川の世界に誘われました。軽便鉄道敷設・山道などの風景描写や少年の心理描写等々、芥川龍之介の表現力のすごさを再認識しました。名作が堤腰さんによって現代によみがえった、と思いました。

次は向田邦子「父の詫び状」より、「ごはん」。その中の「三月十日」の朗読です。東京大空襲の中で少女だった向田邦子がどんなことを考えていたのか、家族はどう振舞い、「戦争」「空襲」をどう生き抜いたのか、考えさせられました。

最後は、松谷みよ子作「おときときつねと栗の花」。「私ね、きつねに化かされたことがあるのよ」と、おときさんという女性が昔を振り返りながら語るという形式の小説。一人称の世界で、少女時代のおときちゃんが目に浮かぶようでした。

三作品とも全く違う風情で、それなのに、すぐにその世界に没入できる心地よさが、堤腰さんの朗読の魅力です。すごい先輩がいるのだと、生徒たちもびっくりしたことでしょう。生徒代表からの花束贈呈、堤腰さんは大変喜んでくださいました。

「朗読会でアンコールは珍しいのですが」と前置きされて堤腰和余さんが最後に読んでくださった詩が、谷川俊太郎の「春に」でした。

題名を聴いた時、私はちょっと震えました。それまでの3つの作品はちゃんと題名も内容も伺っていましたが、最後にご用意くださった詩についてだけは、全く情報を伺っていなかったのです。この詩は思春期の心をみずみずしく読んだ詩で、国語の教科書に載っていた時期もありますし、合唱曲にもなって、西遠の音楽コンクールでも何度となく歌われています。私も大好きな詩です。涙なしには読めないこの詩を、堤腰さんが読んでくださる…。個人的に鳥肌ものでした。司会席で、実は涙をぬぐっていました。

堤腰さんの世界を堪能できた記念公演。言葉を大事に読む、心を大事に表現する、…その大切さを改めて感じたひとときでした。そして、たおやかに、凛としておられる堤腰様の姿に「典雅」「荘重」を感じました。私たちが目指すべき生き方を体現してくださる先輩の姿は、生徒たちの心にも深く刻まれたことでしょう。
堤腰様、今日は素晴らしいご公演を本当にありがとうございました。