昨年亡くなった父の部屋。整理整頓が上手だった父(私は全く受け継がなかった!)の部屋なので、引き出しの中も、ファイルなども、本当にきれいになっていたのですが、机を空ける、本棚を減らす、という大方針の下、断捨離的な整理をしていたところ、万年筆が3本出てきました。インク壺2つ、インクカートリッジ3種類も出てきたのですが、どの組み合わせでインクを入れるのか、果たしてまだ使えるのかなどなど、疑問符いっぱいの家族。「思い切って捨てる」派の弟を振り切り、母と私と妹は万年筆とカートリッジの組み合わせ作業をはじめました。呆れる弟を尻目に作業は続く…笑。いろいろ組み合わせていくうちに、このうち2本はカートリッジがぴったり合って、再び書けるようになりました。「取っておく」派の女3人大喜び。早速3人で万年筆を分けることにしました。
書けるようになった2本は母と妹がもらうことにし、最後の1本を私がもらいました。この一本が、カートリッジじゃなさそう、どうやらインク壺からインクを吸入するタイプのようなのですが、どうすればインクを充填できるのか皆目わかりません。そこで、昨日、街中に出かけたついでに、ロフトで店員さんに聞いてみることにしました。
分かればラッキーぐらいの軽い気持ちで、レジにて「このペン、父の形見なんですけど、メーカーも分からないし、インクが分からないんです」と相談しました。すると、研修中の店員さんを指導していた男性店員さんが、それはそれは親切に対応して下さったのです。面倒くさい私のリクエストに、「預からせていただいてもよろしいですか?」とちゃんと許可を求めてくださる。私が万年筆を渡すと、じっくり観察し、ネットでも調べてくださり、「お待たせしてすみません」とおっしゃる。いえいえ、そんなと恐縮する当方。店員さんは、メーカーやインクの充填の方法、そしてインクのカートリッジならこれです、と売り場の位置まで丁寧に教えて下さったのです。それだけでなく、「この万年筆はよくケアもされています。とても大切にお使いだったと思います。」と万年筆の使い主だった父に敬意を表してくださいました。親切な対応に感激しました。宝くじで1億円もらったような(もらったことはありませんが)気持ちになりました。本当にありがとうございました。
帰宅した私は、インク壺の蓋を開け、慣れないインク充填の儀式を行い、ちょろっと指先をブルーブラックに染めながら、何とか万年筆に再びブルーブラックの息吹を与えることに成功しました。店員さんのおかげです!
恐る恐る書いてみたら、太い胴体の万年筆なので、字がおおざっぱというか大胆になるのです。そうか、父はこの胴体の太さからあの大きな字を書いていたんだー、と妙に感心しつつ、父がいつもハガキいっぱいにブルーブラック色の宛名を書いていたことを思い出し、笑ってしまいました。
で、私が初めて父の万年筆で書いた字がこの写真です。人はなぜ試し書きに自分の名前を書くんでしょう‥?(笑)
そして、気づいたことがあります。この万年筆で書いた私の字が、父の筆跡に似ていたのです。いつものボールペンで書くのとは全然違う私の字でした。
このメモを母に見せたら、「やだ、ホントに似てる!」と吹き出し、ふざけ過ぎのこの文章を仏壇にお供えする始末! 父も苦笑していることでしょう。
父の万年筆がこうして甦って、私の筆入れに新たに仲間入りしました。色とりどりのペンが好きな私の筆入れには、異色の新人です。地味な新人さん、筆入れの中できっと戸惑っているでしょう。でも、大事に使いたいです。特に、誰かにお手紙書く時に使いたいな、と思います。
もし私からブルーブラックの大柄な字の手紙が届いたら、父の万年筆で書いた父譲りの字だと思ってご笑納ください。