この頃の読書から

今日は、土曜休日。
昨日でテストも終わったので、部活の休日練習も本格化しています。
また、センター試験を受けて国公立出願の面接等も進められています。
我が家では紅梅が咲き誇っています。

昨日などは、メジロがたくさん遊びに来ているのを見かけました。
鳥たちにもうれしい花の季節ですね。
さて、最近読んだ本をいくつかご紹介します。
1冊目 「五色の虹」

「五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後」
三浦英之著(集英社文庫)
5月4日の当ブログ「連休の読書」で紹介した「南三陸日記」の筆者が書いた本で、第13回開高健ノンフィクション賞受賞作です。
実はこの「五色の虹」の方が「南三陸日記」よりも購入は早かったのですが、戦時中のことを扱った本で、重い内容であることはわかっていたので、なんとなくそばに置きつつも開くのを敬遠していました。
パソコンを修理に出した連休に、今ならまとまって読めるかなと思い、手に取ってみました。
本を開くと、その文章力と取材力とに引き込まれ、途中で本を閉じるのがもったいないぐらいの気持ちになりました。
朝日新聞記者の筆者のもとに、ある日一本の電話がかかりました。
その取材から彼は、満州国に「建国大学」という大学があったことを知ります。
石橋莞爾が提唱し、関東軍と「満州国」政府によって1938年に新京に開学した建国大学は、国策大学として位置づけられたにもかかわらず、実際には思想統制もなく、民族協和がその建学の精神でした。
今でいえば「グローバルマインド」を育てる環境が整っていたのです。
日本人、朝鮮人、中国人、モンゴル人、白系ロシア人の学生が共に暮らし、毎夜激論を交わしていたそうです。
しかし、この大学の卒業生には数々の受難が待っていました。
戦況が厳しくなり、最前線に立たされた者、終戦後殺されたり、捕虜にされたりした者、身分を隠して生き永らえた者…。
優秀な学生たちが一堂に会した「満州建国大学」、しかし、その存在は歴史の中に葬り去られていたのでした。
筆者三浦英之氏は80代90代の卒業生を一人ずつ訪ね歩き、建国大学とは何だったのか、彼らの人生とは、アジアの歩みとは…ということを掘り下げていきます。
私はもちろんこの「建国大学」の存在を知りませんでした。
89歳の父も、知らなかったそうです。
ページをめくるごとに驚きの連続です。
よくこうして生き永らえた方々がいた!という驚きや、取材の中で様々な理不尽に出会った筆者と共有する憤り、運命に翻弄された卒業生の涙など、自分も共に取材の旅に出ているような感覚でした。
この優秀な若者たちが、戦後たどった道は、艱難辛苦の道でした。
しかし、彼らの連帯、絆の強さもまた特筆に値するものでした。
今、この本は、私が読み終え、父が読み進めています。
久しぶりに親子で本の感想を語り合える、そんな本に出会うことができました。

2冊目 「82年生まれ、キム・ジヨン」

「82年生まれ、キム・ジヨン」
チョ・ナムジュ著 斎藤真理子訳(筑摩書房)
韓国でベストセラーとなったこの本、多くの韓国女性が支持していると言います。
女性として受けてきた生活の中の当たり前のような困難や差別が、キム・ジヨンという一人の女性の歴史として語られ、そこに多くの女性が「これは私だ!」と共感したのでしょう。
それは、日本の女性とも無縁ではありません。
私は、ずっと以前に読んだ「祖母・母・娘の時代」(岩波新書)と重なるような印象を持ちました。
「祖母・母・娘の時代」では、だんだんと女性が権利を獲得してきた歴史を感じましたが、
この「82年生まれ、キム・ジヨン」では、なかなか獲得できない女性の権利を身にしみて感じました。
ぜひたくさんの方に読んでほしい本です。

3冊目 「声で楽しむ 美しい日本の詩」

「声で楽しむ 美しい日本の詩」大岡信・谷川俊太郎著(岩波文庫)
発売されると知り、すぐに購入しました。
声に出して読むために。
表紙の絵は、私の大好きな安野光雅さんです。
この本に選ばれた光太郎の詩は「ぼろぼろな駝鳥」でした。
万葉集、梁塵秘抄、芭蕉、そして近現代の短歌や詩・・・
様々な「詩」を声に出して少しずつ、アトランダムに読んでいます。
黙読とは違う味わい方をしばらく楽しんでみたいと思っています。