高校講堂朝会「人生の基盤を作る」

今日の高校講堂朝会で、最初に紹介したのは、こちらのウェブ記事でした。
ショパンの国に押し寄せるウクライナ難民 日本人ピアニストが語るショパンの「戦争への怒り」という、昨年8月7日に公開されたYahoo!のニュース記事です。

この記事で紹介されている西村美穂さんは、西遠の卒業生です。ワルシャワ在住の西村さんが、ウクライナから逃れた音楽家の助けになりたいと動く姿に感動した人や、音楽には国境がないのだという思いを強くした人、ショパンの音楽を思った人…。いろいろな感想を持ったことでしょう。
そんな中から、3名の皆さんにまどかリポーターがマイクを向けると、3人はそれぞれ、大変しっかりした意見を述べてくれました。

こういう時、マイクを向けられた生徒の発言力にはいつも感心します。高校時代の自分が先生からマイクを突然向けられたらちゃんと喋ることができただろうか、と思うと、今の西遠生たちは「話す力」を確実に得ていて、その姿はとても頼もしいです。

さて、西村さんは、この取材を受けた後、西遠に3回お越しくださっています。一度目は、昨年9月。当ブログでも、西村さん来訪記を掲載しました。(2022年9月14日のブログ
この時、取材をした友情編集委員には、今日の講堂朝会のスタートは大変懐かしかったことでしょう。
2度目、3度目のご来校は今年の夏です。夏休みの一時帰国中に、西遠に2回お越しくださったのでした。

その時のことを、私は高校生に語りました。西村さんご自身の口から、「ウクライナから逃れてきた音楽を志す若者たちを助けようとした根底には、西遠での平和教育があったのだと思います」という言葉が出たこと。西村さんご自身、こうして母校を訪ねるまで、そういう根底があったことに気づかなかったとおっしゃいました。西村さんの心の奥深くに、西遠での6年間の学びが蓄積され、それが彼女を突き動かしたのだとしたら、人生において中高6年間どこで何を学ぶかは本当に大きいと思います。生徒の皆さんの心の奥底にも、西遠での学びがどうぞ蓄積していますように、と心から思います。

もう一回ご来校くださったのは8月12日。ちょうど、学園ではエコクッキングのイベントが行われている時でした。西村さんは昨年ご自身が登場したニュース記事(前出)を書かれたジャーナリストの新田義孝さんと連れ立ってお越しくださったのでした。世界の紛争地やそこで暮らす市井の人々を取材し、ウクライナにもロシアの軍事侵攻が始まった途端に駆けつけた新田さんは、ワルシャワで西村さんを取材しました。そのご縁で、新田さんは西村さんの母校である西遠を訪ねてくださったのでした。「愛の灯」像を熱心に見つめるお姿が大変印象的でした。戦争中の西遠の悲しい歴史、それを忘れまいとする生徒たちの活動を、新田さんはどう受け止められたのでしょうか。

西村さんや新田さんのように「誰かに何かを伝える行動力」を、私たちは持っているのでしょうか。いつかお二人をぜひ改めて西遠にお招きし、お話を伺ったり、演奏をお願いしたりしたいと思っています。生徒の皆さんにも、こうして真剣に考え、行動している本気の大人の人たちのお話を直に聞いてほしいと思うからです。西村さん、新田さん、どうぞ西遠の生徒たちに、お話や音楽をお聴かせください。よろしくお願い致します。

今、若者が簡単に薬物に手を出してしまったり、闇バイトに手を染めてしまったりするニュースが溢れていて、教育に携わる大人の一人として、心からこの事態を憂慮しています。甘い言葉に惑わされたり、軽いパフォーマンスになびいたり、コスパのいい稼ぎ方をしたいなんて言う考え方に陥らないためには、どうしたらよいのでしょうか。それには、本気の大人の姿が身近にあること、その話を聞き、生き方に深く触れることが大事だと思います。そうした学びを若いうちに自己の中に蓄積せねばなりません。今、「人生の基盤」を作っている高校生たちに、それを切に願って、私は今日の訓話を終えました。

感想が届く週明けを楽しみにしています。