図書館入り口に掲げている「小さな白板(ホワイトボード)」第37週は、10月2日から9日の終業式まで。学園祭中は図書館入り口が模擬店の店頭となったため白板をお休みしましたので、月~月までの週末を除いた6日間です。いろんな秋のラインナップです。
10月2日(月)
さば、いわし、うろこの秋は楽も苦も雲からくもとなりてちらばる
佐藤弓生
魚の名前にはじまって「らくもくも」「雲からくもと」と音で遊んだり漢字と平仮名で遊んだりして、雲がいっぱい登場するこの短歌。雲という集合体がふわあっと四方にゆったりと散らばっていくような動きを感じます。秋という季節は、楽も苦も全てふうわりと解体してくれるのでしょうか。感情に囚われなくなるようで、心が軽ーくなる気がします。
10月3日(火)
立山の秋に腰掛けかりんとう 鶴濱節子
スポーツの秋、登山の秋の俳句を紹介。立山の秋に腰掛けるっていう表現がいいなあ、すてきだなあ、絵になるなあと思いました。そして、かりんとうが登場! 甘いかりんとうで、疲れていた身体に再び力がみなぎってきますね。山の岩肌に腰かけてかりんとうをほおばる女性の姿が目に浮かぶようです。
10月4日(水)
ゆったりと読書の秋も楽しめず本屋の正面に来年の手帖
上田結香
スポーツの秋の次は、読書の秋の短歌です。10月、本屋さんの店頭は本当に来年の手帳やカレンダーだらけですね。私も昨日訪ねた本屋さんでカレンダーコーナーに圧倒されました。なんだか商業主義にせかされまくっているような、気忙(きぜわ)しさが否めません。本屋さんに出かけた時ぐらいは。「今読みたい本」との出会いが最優先ですよね。生徒の皆さんにも、来年の手帳をどれにしようと考えるより、読書の秋を満喫してほしいなあと思います。
10月5日(木)
運動会引き直されし白線にトンボ止まりぬ翅を広げて
山瀬佳代子
またまた運動の秋に戻ります。運動会や体育大会は、今や5月が主流ですが、この秋晴れの季節に開催する学校もたくさんあると思います。引き直された白線の上にトンボが止まった、という何気ない発見。作者は、絵が浮かぶかのように説明してくれました。運動会の歓声も聞こえてきそうです。線を引き直したのだから、運動会も盛り上がりを見せている頃でしょう。そんな「動」の世界の真ん中で、白いラインの上にトンボが翅(はね)を広げています。そこだけ一瞬時と音が止まったような「静」の場面。三十一文字の世界の広さを感じます。
10月7日(金)
蝶を曳く蟻さながらに段ボールを引き摺る生徒文化祭来る
愛川弘文
三好達治に「蟻(あり)が/蝶の羽をひいて行く/ああ/ヨットのやうだ」という詩があります。そこに着想を得て、愛川さんの短歌が出来上がったのかもしれません。文化祭前の生徒たちの奮闘ぶりに、自分より大きな翅を持って歩む蟻の姿が重なったのでしょう。自分より大きな段ボールを抱えて顔が見えない生徒、います、います。西遠にもたくさん学園祭前後に出現します!
準備作業に忙しい学園祭前日に合わせて、この短歌を紹介しました。
10月9日(月)
家庭を持つことと科学者でいることのどちらかを選ぶ必要はない。
カタリン・カリコ
終業式の訓話の中で紹介した、今年のノーベル医学生理学賞受賞者 カタリン・カリコ女史の言葉を紹介しました。mRNA(メッセンジャーアールエヌエイ)を研究する日々の苦労、たくさんの壁、それでも諦めなかった不屈の精神、探究心を、私たちも学ばなくてはなりません。彼女の半生をぜひ皆さんも調べてみてください。
カリコさん、ノーベル賞受賞おめでとうございます!
さて、西遠は16日まで秋休みですが、休日の西遠にキンモクセイが咲き始めていました。
秋休みが明けたら、正門付近でキンモクセイの香りに遭遇できるはずです。