小さな白板2023 第44週

霜月から師走へ駆け抜けた一週間。図書館入り口の小さな白板も季節感を意識しつつ、生徒たちにエールをおくりました。

11月27日(月)
心には管制官はいないから着陸の場所自分で探す
     俵 万智

俵万智さんの最新歌集「アボカドの種」から一首、週明けの生徒の皆さんに、自分の力で生きていくためのエールをおくる気持ちで、白板に書きました。朝ドラ「舞いあがれ」をちょっぴり思い出しながら…。
皆さんの心に指示を出す管制官などいないのだから、自分の力で、自分自身の意思で、生きていく方向やどこに着地するかを決めて歩みましょう。誰が決めるのでもない、あなた自身の人生です。

11月28日(火)
青空より近くてだけど手の届く枝にはゐない百舌もあなたも
     荻原裕幸

百舌(モズ)を見つけた作者。鳴き声で見つけたのでしょうか、止まっている姿を見つけたのでしょうか。そこは青空より近い所なんだけれども、手の届く枝にいるわけではない。手が届くところにいないのは、百舌もあなたも同じ…。「あなた」は作者にとってどんな存在なのでしょうか、気になりますね。
荻原さんの歌集「永遠よりも少し短い日常」より。

「百舌」は西遠でも見かける鳥です。以前、講堂の南の手すりに止まっているところを撮影したのがこの写真です。

百舌は、精悍な姿をしていて、カッコいいのです。その姿に「孤高」を感じるのは私だけかしら…。ただ、百舌には、ちょっと怖い習性も。「百舌の速贄(はやにえ)」と言って、自分の捕まえた獲物を自分の縄張りの中の木の枝の先に突き刺すんですよね。オスに見られる行動だと言われています。鳥の生態も調べると面白いですね。

11月29日(水)
「摩擦を避けるための無難な選択が常に正しいとは限らないこと、時には頑固に自分の思う道を行くことも大切だってこと」
  椹野道流「最後の晩ごはん14」より 

私がよく紹介するエッセイ「祖母姫、ロンドンへ行く!」の筆者 椹野道流(ふしのみちる)さん。彼女の小説「最後の晩ごはん14 地下アイドルと筑前煮」より、倉持悠子の言葉を書きました。悠子はとても素敵な登場人物です。主人公などの若い世代に対して、辛らつだけれど、人生で大事にしてほしいことを毅然として話す女性です。
悠子の台詞は、こう続いています。
「摩擦を避けるための無難な選択が常に正しいとは限らないこと、時には頑固に自分の思う道を行くことも大切だってこと。(中略)無難な選択に甘んじて、自分の望みや考えを深く突き詰めることを怠ると、その怠惰に思いもよらないタイミングでしっぺ返しを食らうことになる。」
自分の意思を曲げない頑固な姿勢を貫かないと、思いがけない時にしっぺ返しを食らってしまう…人生の先輩のこの言葉を肝に銘じて、人生の選択をしていきたいですね。

11月30日(木)
にび色のうねりのなかにさむい日とねむい日とすごくねむい日とある
     宇都宮敦

「現代短歌パスポート」という本で見つけた短歌です。そして、今週一番反響の大きかった短歌がこれでした。読んで「分かるーっ」と言った生徒もいたそうです。寒い日と、眠い日と、さらにすごく眠い日がある、とは中高生のこの時期の実感でしょうか。
「にび色って何色ですか?」と複数の生徒に聞かれましたので、写真には「にっぽんのいろ日めくり」で鈍色(にびいろ)を探し、白板の横に置いてみました。白板の右は「にっぽんのいろ図鑑」です。
せっかくなので、「鈍色」をまんなかにして、日本の色(紺色~灰色系)をちりばめてみました。

カメラで写すと少し色が変わってしまいますので、気になる色や色の名前は、ぜひご自身で調べてみてください。

12月1日(金)
ひとふりの刀のような冬がきて挨拶をする ちいさな声だ
    魚村晋太郎  

12月スタートの挨拶のつもりで選んだ一首です。「ひと振りの刀」のような、という表現は、高村光太郎の「きっぱりと冬が来た」にも通じるように思います。冬の挨拶は小さな声なんですね。自然に耳を傾けないと、聞こえてこないのかもしれません。皆さんには、冬の到来の挨拶は聞こえましたか?
「ねむらない樹」10号で出会った短歌です。

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昨日は、午後も小学生の皆さんを対象としたイベントがありました。午後、「入試直前授業」が行われ、夜には「星空教室」がありました。寒い中、ご参加くださった皆様、ありがとうございました!