遂に2023年最終週の「小さな白板」です。冬休みに入るまでの5日間と、小学生をご招待した「図書館クリスマスイベント」1日の、合わせて6枚が、2023年最後の「小さな白板」です。それでは、今年最後の6枚を振り返ります。
12月18日(月)
冬とあらば篝火草の大き鉢購はんと思へど鍋を購ひきぬ
馬場あき子
「篝火草」なんて素敵な花の名前!と思いました。12月の声を聞くと、街にあふれる鉢植えのシクラメン。このシクラメンの花が「かがり火のよう」だから「篝火草」なんですね。「ブタノマンジュウ」という名前も持つシクラメンですが、「篝火草」は本人(?)にとっても嬉しい名前じゃないかな。
先日出張で歩いた静岡市街地にも、シクラメンがたくさん飾られていて、華やぐクリスマスシーズンを盛り上げていました。
作者も、クリスマスが近づくのを意識してシクラメン(篝火草)の大きな鉢を買おうと思ったのでしょう。けれども、あれこれ考えて、結果的には(きっと大きな)「鍋」を買った、ということですね。どこからか、「節約、節約」という声が聞こえてくるような気がしました。生活者はまさに「花より団子」!家族が恩恵を受けるのも、花より鍋かもしれません。
12月19日(火)
下にいた「心」が真ん中占めたとき恋は愛へと変化している
近藤史紀
『先生、この歌すごいですよね!』と声をかけてくれた生徒もいました。「恋」という字と「愛」という字の「心」の位置が違うことに注目し、漢字から恋と愛の違いを歌った短歌です。下から真ん中に「心」が来たことで、「愛」の重みを感じさせますね。この短歌、朝日歌壇ライブラリーで出会いました。朝日歌壇2015年2月16日に掲載された短歌です。
12月20日(水)
もういいというまでネコをなでたくる いう気配なくこちらが折れる
宇都宮敦
猫が嫌がって逃げ出すまでずっとなでたくってやるぞ、と思ったのに、いつまでたっても猫が「もういい」と言わない…とお手上げ状態のご主人。猫の方もご主人の魂胆が分かっていたりして…。気まぐれな猫に翻弄される飼い主の姿がとってもユーモラスですね。猫は本当に不思議な生き物です。
12月21日(木)
換気する図書館に入る北風に本の香りのキリリと締まる
鈴木正芳
朝日歌壇ライブラリーで出会ったこの短歌、掲載期日が2020年12月6日とありました。コロナ禍真っ只中の2020年。感染防止のために神経質なほど換気をするようになった世の中で、図書館も換気が常となりました。窓から入ってくる北風の冷たい空気、でもそこに「本の香り」が乗ってきます。キリリと締まるのは、図書館の空気でしょうか、作者の心でしょうか。図書館という静謐な空間に流れる独特な気品を感じました。
12月22日(金)
言葉とは風ニモ負ケズ考える葦が歩いていくための足
宮崎大宮高校 川上峻
「短歌研究:という月刊誌の2023年11月号に掲載されていた短歌です。正確にいうと、歌人の笹公人さんが11月号に「牧水・短歌甲子園2023」のタイトルで作品20首を発表しており、この川上君の短歌を詞書(ことばがき)にして
川上峻第一歌集のタイトルは『賢治とパスカル』がよかろう
という歌を詠んだのでした。
「考える『葦』」が風にも負けずに歩いていくための「足」が「言葉」であるという力強い歌。これを書いた高校生川上君の博識と前向きな姿勢が素晴らしいですね。将来、『賢治とパスカル』という歌集が出来上がる日を楽しみに待ちたいです。
12月23日(土)
やさしさをふりまく光の本たちが並ぶ木陰のような図書室
酒井那菜
小学生の皆さんにお越しいただく日の朝、この短歌を書いて図書館入り口に置きました。西遠の図書館にも、「やさしさをふりまく光の本たち」がたくさん待っています。
昨日は、本棚の本たちの背表紙とにらめっこしながら、「本の題名しりとり」に挑戦してくれた皆さん。木陰のような図書館でのひととき、楽しめてくれたなら嬉しいです。
冬休み中は図書館は閉館となりますが、西遠の生徒の皆さんも休み明けの新年には、また本を借りに来てください。来たる2024年、図書館をどんどん活用してほしいです。
メリー
クリスマス!