小さな白板2024 第5週

図書館入り口に掲げている「小さな白板(ホワイトボード)」、1月から2月へと月を跨いだ第5週を振り返りましょう。

1月29日(月)
ロッカーに着ていた服を入れるとき出すとき触れている冬の重さ
       吉田恭大

出勤してロッカーに自分の着ていたコートをしまい、また帰る時に同じコートを出す。その繰り返しの中で、冬の衣服の重みや冷たさ、或いはぬくもりを感じながら、冬の日々が過ぎていきます。「冬の重さ」は自分を守ってくれる重さでもあるのかもしれません。

1月30日(火)
胸まろき小鳥が大木をうつりゆく乾ける冬のおとを聴きをり
       横山未来子

「胸まろき小鳥」という言葉に冬のモフモフ度の増した小鳥たちを想像します。スズメでしょうか、それともかわいさが人気のシマエナガでしょうか。大樹の下で、小鳥の動きを見上げながら、冬の音に耳を澄ます作者の姿が目に浮かぶようです。正門で朝、木々を見上げているオオバの姿を目撃した時には、「また、校長が野鳥を観察してるな」と呆れつつ、この短歌のことも思い出してくださったら幸いです。

1月31日(水)
椿落つ ただ会ひたくて。ただ声が聞きたくてゆく堀沿ひの道
       秋月祐一

切なさが感じられるこの短歌を1月の最期に紹介しました。「椿落つ」という第一句がきっぱりとしていて、すごく重厚ですね。椿の花が落ちたのを目にした作者が、どうしようもなく会いたくなった、声が聴きたくなった、いま会わなくちゃいけないという衝動的な、切羽詰まった思いに、作者の大事な人の存在を想像して、引き込まれました。

2月1日(木)
冬の雨ひと夜を降りてあたらしく濡れたる泥(ひぢ)の面(おもて)まばゆし
       大辻隆弘

2月1日、雨上がりの朝だったので、この短歌を選びました。泥道ではありませんが、朝正門に立った時、南グラウンドの地面が濡れているのがなんだかとても美しくて、春の来るのが近いことを予感した朝でした。

2月2日(金)
青空に枝さしのべて梅ふふむ
       佐藤喜孝

久方ぶりの俳句です。「梅ふふむ」という言葉を前日に知りまして、「ふふむって何?」と調べると、梅がもうすぐ咲きそうな蕾の膨らんだ状態を指すのだと知りました。「梅ふふむ」は、「梅の花の蕾が染まりふくらみ始めることを表す季語」とのこと、早速「梅ふふむ」の俳句を探してみました。そこで出会ったこの俳句、冬の青空が美しい浜松にはこれがぴったりだなと思い、白板に書きました。

ちょうど、2月3日の日めくりカレンダー(左)が、この俳句のイメージ写真のようでした。

学園の花々の開花も進んでいますよ。週明けが楽しみです。