小さな白板2024 第8週

先週に比べて気温は下がりましたが、そろそろ木々も春の装いが本格的になってきましたので、今週の「小さな白板(ホワイトボード)」は、彩り豊かな短歌を選んでみました。

2月19日(月)
蜜蜂を借り来て放すいちご園ハウスの中の春は甘やか
          木村義熙

2月11日の朝日新聞「朝日歌壇」で見つけた短歌が、春の彩りも鮮やかな一首だったので、週の初めに書きました。苺を甘くするために、蜜蜂も一役買っているのですね。いちご農家の方々のご苦労を感じながら、店頭の赤い苺にますます美しさを感じました。

2月20日(火)
どこまでも黄色やまぶきレモン色ゴッホに見せたい菜の花畑
       中村桃子

春の色を探して、「朝日歌壇ライブラリー」で様々な歌を鑑賞していた時に、この短歌に出会いました。黄色系の美しい言葉が並び、「ひまわり」の画家ゴッホが出てくるこの歌にとても惹かれました。ちょうど、ゴッホ展のフライヤーが部屋にありましたので、ゴッホの色彩を確認してみましょう。

小学生の頃、私は伝記を読むのが好きでした。小学校の図書室の伝記コーナーに並んでいた「画家」はゴッホ一人でした。情熱的で病的にも感じられる絵と共に、その劇的な生涯は小学生の私に大きなインパクトを残したのでした。21日の白板にも、2日続けてゴッホが登場します。

2月21日(水)
ゴッホからみれば歪(ゆが)んでいたのだろう青に塗りたる「ゴーギャンの椅子」
       森暁香

ゴッホにはゴーギャンという親友でありライバルがいました。一緒に住んで芸術を高めようとした時期もありましたが、二人の絵を見ればその方向性の違いは明らかです。わずか数週間で共同生活は解消したということです。繊細なゴッホはそこでも深く傷ついたのではないでしょうか。ゴッホは、「ゴーギャンの椅子」「ゴッホの椅子」という絵を残しています。ゴッホの心の内が、ゴーギャンの座った肘掛椅子の青に出ているのかもしれません。この歌も、朝日歌壇ライブラリーで出会った短歌です。

2月22日(木)
かきどおしからすのえんどうほとけのざ畦をふちどる紫の春
        尾辻のぶほ

ゴッホの青から、春の色へと戻りましょうか。4色目は「紫」です。この短歌も「朝日歌壇ライブラリー」から。「かきどおし」「からすのえんどう」「ほとけのざ」は、いずれも春に紫の花をつける野草です。田んぼの畦(あぜ)に咲く小さな紫色の花々を愛でる作者の優しい視線を感じました。「かきどおし」という名前は初めて聞く名前でしたので、早速ネットで調べたところ、草取りの時いっぱい抜いていた草でした。確かに、抜き忘れたその草から紫の小さな花が咲いていたなあと思い出し、「かきどおし(垣通し)」という名前をしっかり覚えました。丸い葉が並んでいるように見えることからレンセンソウ(連銭草)、癇の薬にする薬草にすることからカントリソウ(癇取草)とも言うのだそうです。牧野富太郎というか「らんまん」の萬太郎さん曰く「雑草という草はない!」ですもんね、これからも草の名前を一つ一つ覚えていきたいです。

2月24日(土)
It is my wish that I may die
around the same time
as the Buddha passed away
when the moon is full
and under a cherry tree in full bloom.
   西行 (ピーター・J・マクミラン訳 )

さて、週末は国際カンファにちなんで英語の歌を。朝日新聞の夕刊で紹介された西行の有名な一首の英訳を書いてみました。西行の有名な若です、ご存じですか?

  願わくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月の頃  西行

この和歌の「花」は「桜」を指しています。如月の望月と言えば、2月の満月。旧暦なので、3月の満月なのでしょうが、ちょうど24日が2月の満月でしたので、この一首を紹介しました。英語にした時、仏陀(ブッダ)が出てくるのが印象的ですね。お釈迦様のように、花の下で、2月の満月の頃に死にたいという西行の望み。彼はほぼその願いを叶えて、2月15日に亡くなっています。

では、河津桜のピンクと、24日の満月をどうぞ。雨の合間の土曜に、満月を拝むことができたことは幸運でした。

今日は、制定品の購入の日でした。雨模様の中、新入生の皆さんがご家族と共に雨の西遠を訪れ、制服の採寸や制定品の注文を行いました。新たな西遠のメンバーに出会えて、とても嬉しい一日でした。皆さん、肌寒い中、お疲れ様でした!3月25日に元気に再会しましょう。