小さな白板2024 第23週

6月に入りました。学園内がパフォーマンス大会に大いに盛り上がった週前半。そして、週末には第1回オープンスクールが行われました。行事の多かった第23週の「小さな白板(ホワイトボード)」、ご紹介します。

6月3日(月)
大勢で寄り集まって一つの美つくるのが好き 紫陽花が好き
       上田結香

6月の白板は、紫陽花の歌からスタートしました。「『本当なら今ごろは』ってみんな言う本当なんてどこにもないのに」」の短歌で知り合った上田結香さん。つい先日もお手紙いただいたばかりです。そこにも、大好きな紫陽花の季節が来た喜びが綴られていました。私もちょうど、この短歌を「朝日歌壇ライブラリ」で見つけ、6月になったら白板で紹介しようと思っていた矢先でした。ので、おっ!以心伝心!と思い、嬉しくなりました。上田さんの短歌は、いつもとてもチャーミングです。紫陽花の季節、上田さん、ますますお元気で! またお手紙します。

6月4日(火)
ツバメの巣一羽残されもう三日飛び立て行けよ勇気を出して
       古賀公子

ツバメたちが勢いよく舞い飛ぶ学園です。学園にはツバメの巣がありませんが、おうちやお近くにツバメの巣がある方には、巣で育つヒナの成長はとても気になるところでしょう。
一羽残った子ツバメに向かって呼び掛けるこの歌、小さな生き物への愛おしさが伝わってきます。それはそのまま、親が子に、大人が子どもに、成長と旅立ちを祈る心にもつながりますね。私たち大人には、子どもたちの背中を押したくなる瞬間がたくさんあるのです。「かわいい子には旅をさせよ」ですね。英語では、
It’s important for a bird to leave the nest. You can’t coddle kids forever.
などという言い回しがあるそうです。

6月5日(水)
感動は”いっしょうけんめい”の熱い風
   平成3年度全国高校総合体育大会静岡の標語

この日行われる「パフォーマンス大会」に向けて、生徒の皆さんに届くような短歌や俳句はないかな、どんな短歌を載せようか、…実は当日の朝まで考えあぐねていました。朝、図書館に前日飾ったままだった白板を取りに行った時、フッと、このフレーズが頭に浮かびました。

「感動はいっしょうけんめいの熱い風」

この言葉は、平3総体のキャッチフレーズです。インパクトのあるキャッチフレーズでしたので、覚えていらっしゃる方も多いでしょう。この言葉が一番パフォ当日にふさわしい!と思いました。
この日、講堂の舞台で渾身のパフォーマンスを見せた生徒たち。生徒たちの一生懸命な姿に感動した保護者の皆様も多かったのではないでしょうか。

6月6日(木)
電線のうぐひす向きをかへくるる双眼鏡の嫗のために
      秋山佐和子

このところ、学園にウグイスが毎日やってきて、きれいな声でさえずっています。そこで、この歌に登場してもらいました。ただ、私自身は、ウグイスが電線に止まっているのを見たことがありません。藪の中にいて歌っているのがウグイスの常だと思っていたので、この短歌を月刊誌「短歌研究」で見つけた時、双眼鏡でウグイスを観察できる作者のことがとってもうらやましくなりました。ウグイスの写真、まだ撮れたことがないのです…。ウグイスさん、どうぞ私にも撮影サービスしてください!

6月7日(金)
つくばいを囲むみどりの新しく濡れたるときに苔は匂えり
       大木一真

皆さん、「つくばい」を知っていますか?
写真を見てください。私が生まれ育った家のつくばいです。小鳥が水を飲んだり水浴びをしたりするのをよく見ましたっけ。
つくばいとは、和の庭には欠かせない石の水鉢です。goo辞書には、「茶室の庭先に低く据え付けた手水 (ちょうず) 鉢。」と説明されています。蹲 または 蹲踞 と書きます。
つくばい、苔、雨、緑…日本の梅雨の時期の美しさを教えてくれる短歌です。日本は湿気があるからこそ、四季の移ろいの中で、梅雨の時期の美しさを知ることができる国です。苔は、湿潤な気候だからこそ美しいと思われるものなのです。乾燥の国では、苔が生えることは不浄であり、恥ずかしいことだという受け止めもあるのです。「転石、苔を生ぜず」ということわざも、湿潤な国と乾燥した国とでは受け止め方は180度違うと言われています。京都の苔寺も日本ならではの美なのです。皆さんも、ぜひ日本の美しさを知ってください。それを英語で海外の人々に紹介できたら、「世界で生きる力」もまた堅固なものになるでしょう。

6月8日(土)
新しい登場人物増えてゆく子の話聞く梅雨の日曜
       山添聖子

オープンスクールで図書館を訪ねる保護者の皆様に向けて、この短歌を書きました。子育ての短歌は、共感したり、懐かしさを感じたりすることができるので、出会うとついつい書き留めます。この短歌は、去年2023年7月16日の朝日歌壇掲載の歌です。山添さんご一家(お母さんの清子さん、娘さん、息子さん)の短歌は、ご家族の成長が分かってとても楽しみなのです。
梅雨の頃、お子さんの交友関係が広がって、新たなお友達の名前でどんどん登場するようになると、お母さんはきっと嬉しく、でも覚えきれなくて大変になるのでしょうね。親子の団欒のひとときが微笑ましいです。

今日の浜松は雨。そろそろ梅雨入りでしょうか…。