小さな白板2024 第24週

図書館入り口に掲げた「小さな白板(ホワイトボード)」、6月10日からの第24週を振り返ります。第24週は、人生の名言と短歌を半々でお送りしました。

6月10日(月)
人間の価値は、財産ではなく、他人と分かち合ったものの量です。
       オードリー・タン

第24週のスタートは、「きみを変える50の名言」3期より、台湾のIT政策を担当するデジタル発展部長(デジタル発展相)をこの春まで務めていた天才プログラマー オードリー・タン氏の言葉を紹介しました。個人の財産を得ることに固執する人が多い中で、他人と分かち合ったものの量で人間の価値が決まるというオードリー氏の言葉に大変感激しました。台湾政府のコロナ対策でも素晴らしい手腕を発揮した彼の考え方を、もっともっと多くの人が学ぶべきではないでしょうか。

6月11日(火)
社会は水車のように回っている。みんな関わり合っている、だからお互い様です。
       サヘル・ローズ

この日の言葉は、サヘル・ローズさんが著した『支える、支えられる、支え合う』(岩波書店)より。本のタイトルの意味が分かる文章ですね。一人で悩まなくていいし、みんなで支え合うのだから、支えられる時があっても大丈夫、という温かいメッセージが伝わってきます。前日のオードリー・タン氏の「分かち合う」ということとも呼応しますね。

6月12日(水)
ジャカランダ散りつぐ道のむらさきの水無月あはき巴里の空かな
       松浦のぶこ

学園で満開のジャカランダの花を見上げながら、ジャカランダを詠んだ短歌はないかなあと「朝日歌壇ライブラリ」で検索し、パリ(巴里)の短歌を投稿する松原さんのこの短歌に出会いました。
ジャカランダの紫の花が散ると、舗道は紫に染まるのでしょう。(ちょうど、先日通った鴨江幼稚園の下の道がそうでした。) 
私にとってはオーストラリアを懐かしむ花ですが、パリにもジャカランダは咲いているのですね。パリのどんなところに咲いているんでしょう。行ってみたいなあ。まさに今ごろのパリの光景ですよね。旅心を刺激する短歌です…。

6月13日(木)
この道を左に折れて坂道の先に合歓(ねむ)の木その先に駅
       阿部芳夫

図書館南の合歓の木を見上げながら、今度は「合歓」で「朝日歌壇ライブラリ」を検索。阿部芳夫さんの2021年8月8日朝日歌壇掲載の短歌を見つけました。
合歓の木は、初夏に箱根や長野県に行った時に沿道に花が咲いているのを見かけた記憶があります。気候的にも浜松より少し後に咲くのかな。
駅へゆく道の途中、目印にもなる合歓の木なのでしょう。淡いピンクの花は、坂道を歩む人を見守ってくれる存在なのかもしれません。

6月14日(金)
どうすれば面白くなるのか。自分が変わることです。自分が変われば世の中が面白くなる。
       養老孟司

『バカの壁』で知られる養老孟司さんの名言を『きみを変える50の名言』から紹介しました。ついつい、周囲への文句ばかりを並べ立ててしまう日々。養老先生のこの言葉に、「人のせいにするんじゃない!自分が変われ!」と叱ってもらった気分で、背筋が伸びました。

6月15日(土)
「エモい」とは翻訳すれば「いとおかし」エモい人らの創りあげたる
     沖ななも

日々新しい言葉が作られているわけですが、なかなかその波に乗っていけません。エモい、という言葉も、少し前に意味までは理解するようになったけれど、自分の語彙として使う気にはなれないオオバです。でも、三省堂の国語辞典には2021年から掲載されているんですね。

【エモい】 (形)〔俗〕心がゆさぶられる感じだ。〔由来〕ロックの一種エモ〔←エモーショナル ハードコア〕の曲調から、二〇一〇年代後半に一般に広まった。古語の「あはれなり」の意味に似ている。(「三省堂国語辞典」)

沖ななもさんは、これを翻訳すれば、平安時代の「いとおかし」だと。言葉の変遷をこんなに軽やかに歌ってしまうなんて、カッコいいなあと思いました。三省堂の「あはれなり」に似ているという説と、沖さんのいう「いとおかし(をかし)」説。どっちがピンときますか? これは、紫式部と清少納言の感性とも通じる問いかもしれませんね。自分が使う使わないにかかわらず、言葉の流れを俯瞰して読み解くのは楽しいものです。

本日6月17日(月)は、代休日となっております。ご了解ください。
      西遠女子学園