小さな白板2024 第26週

早いもので、明日から7月。「小さな白板(ホワイトボード)」も6月最後の週となりました。

6月24日(月)
あの日も/海は青く/同じように太陽が照りつけていた/そういう普遍の中にただ/平和が欠けることの怖さを/僕たちは知っている
 宮古高校3年 仲間友佑「これから」より

沖縄慰霊の日に、式典で朗読された仲間友佑さんの「これから」という詩から一節を白板に書きました。白板の限られたスペースに長い詩の一節だけ載せるとあって、どこを切り取っていいか悩みました。彼の心の叫びをもっともっとたくさん紹介したかったからです。悩みに悩んだ中で、今を生きる若者たちが、戦争の「せ」の字も知らないけれども「平和が欠けることの怖さ」を知っているのだという訴えを載せたいと思いました。平和についていつも深く考えている西遠生たちにも共感できるのではないかと思ったからです。でも、ぜひ仲間さんの詩を全部読んでほしいです。その強い主張に涙が出ます。→こちらをどうぞ。

6月25日(火)・26日(水)
本作で意識を向けようと決めたのは、「なれた人」の裏にいる「なれなかった人」の人生も肯定することです。性別にかかわらず、今まで見落とされがちだった人たちのこともきちんと描きたいと思っています。
 石澤かおる(「虎に翼」プロデューサー)

25・26日と泊りがけの出張でしたので、この白板は2日間飾りました。掲載したのは、朝ドラ「虎に翼」のプロデューサー石澤かおるさんの言葉です。「なれなかった人」の人生も肯定するドラマ作りをしたということに、大変共感しました。 「何かになれた人」(主人公)の成功物語は、挫折する人を対照的に描いて主人公を輝かせるというところが大きいと思うのですが、それをしない姿勢こそが、「虎に翼」の素晴らしさなんだなと納得しました。

6月27日(木)
ムササビの距離感覚は確かなりなかなか追えぬ夜の観察
     中村敬三

ムササビを「空飛ぶ座布団」と呼んでいたのは、わが大学時代の生物学の先輩たちでした。同じ下宿のH先輩なども、ムササビやモグラの研究観察に夜な夜な出かけていましたっけ。ムササビは高い木からふわーっと飛行します。両手を大きく広げて、まるで体を「座布団」のようにして飛ぶ(というか落ちる)のです。この短歌の作者は、ムササビの観察に出かけ、なかなか見つけられないもどかしさを歌ったのでしょう。暗い中でしっかりと目標を見据えて飛び移るムササビの身体感覚に脱帽ですね。

6月28日(金)
あの時代「ローマの休日」の結末はあれしかないとみな思ってた
    上田結香

名画「ローマの休日」のラストシーンを思い浮かべながら、この短歌を味わいました。私も、ずっとあの結末はああしかならないと疑いもせず思っていました。でも、確かに、今は違うかも。王女様にだって、敷かれたレールの上を歩くだけじゃない、もっと選択肢があっていいじゃない!と思える世の中になってきました。女性の生き方を考えるうえで、すごく示唆に富んだ短歌だと思いました。
6月は、上田さんの短歌に始まり、上田さんの歌に終わりました! これからも上田さんの短歌を朝日歌壇で見つけるのを楽しみにしております。