夏休みに入り、「小さな白板(ホワイトボード)」は図書館開館日に掲げるようにしています。8月1日の図書館イベントを皮切りに、第31週は3日間白板を置きました。
8月1日(木)
広島をはじめて訪(と)ひて平和への深き念(おも)ひを吾子(あこ)は綴れり
皇后陛下雅子様
今年の歌会始で皇后陛下雅子様が詠われた短歌です。今年の歌会始のお題は「和」でした。一人娘の愛子様が初めて訪れた広島。愛子様の綴った広島訪問の文章を読み、母として感じた思いが厳かに感じられる短歌で、心に残りました。
私自身が初めて広島を訪ねたのは小学6年生の夏でした。平和公園、資料館、原爆ドーム…心に響くものばかりでした。その時の思いを私は作文に綴りました。
母となってからは、自分の子どもたちにも訪ねてほしいと思っていました。父・母・私・娘と息子の家族旅行で広島を訪れたのは、娘が小学4年生のときだったと記憶しています。娘はその時の思いを読書感想文に綴りました。
広島という地を訪れ、その土地の訴える平和への思いを心の耳で聞くことが、「文を綴る」という行為につながるのでしょう。広島訪問は、家族旅行や修学旅行など様々な形で行われるでしょうが、どんな形式をとるにしろ、私にはそれが「厳かな儀式」のように思われてなりません。
この日は、図書館で「絵本の世界へようこそ」を実施しました。小学生の皆さんにも「8月は平和について考える月なんだよ」をお話しました。覚えていてくれると嬉しいです。
8月2日(火)
ちぐはぐな パッチワークを見るように 五輪のニュース、コロナのニュース
俵 万智
この短歌は、コロナ禍により1年延期されて行なわれた「東京五輪2020」の頃、俵万智さんが発表した短歌です。今から3年前の短歌ですね。
2021年、毎日華やかな五輪のメダル争いのニュースが次々流れる一方で、コロナの感染爆発で、病院が患者の受入れでひっ迫しているというニュースや救急搬送されずに重症化する患者のニュースなど、コロナ禍の社会の混乱が連日報じられていました。明らかにちぐはぐだった2021年の夏のこと、忘れられません。
パリ五輪が始まり、テレビは五輪一色。しかし、あまり報道はされませんが、今年もコロナの感染は増えています。また、ウクライナやガザ地区の惨状は今も続いていて、五輪の陰に隠れている世界情勢の重さに胸が痛いです。
3年前の混乱を忘れ去ってしまう怖さから、この日は白板にこの短歌を掲げたのでした。
8月3日(土)
あなたの持っている「物差し」は、あなたの生き方によって生まれたあなただけの「物差し」です。だから、世の中の「普通」に合わせることはない。
サヘル・ローズ
高校オープンスクールで図書館見学をされる皆さんに、ウェルカムボードのつもりで、サヘルさんのこの言葉を書きました。出典は「支える、支えられる、支え合う」(サヘルローズ編・著 岩波書店)です。
皆さん、自分らしさを大切にしていますか? 世の中の「普通」に翻弄されることなく、あなただけの「物差し」、大切にしてくださいね。
この本「支える、支えられる、支え合う」には、はっとさせられる言葉や新しい視点がたくさん書かれています。
中学生の皆さん、この表紙のシリーズは「岩波ジュニアスタートブックス」(略してジュニスタ)と言って、中学生に読みやすいシリーズとなっていますので、ぜひ本屋さんや図書館で手に取ってみてくださいね。