小さな白板2024 第39週

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図書館入り口の「小さな白板(ホワイトボード)」は、TEDxHamamatsuの日も、図書館は閉館ながらそうっと掲げておりました。カン・ハンナさんへのウェルカムボードのつもりで…。

9月23日(月・祝)
ありがとうと話しかけたらコマワヨと答えてくれた日なたのおじさん
     
 カン・ハンナ

ウェルカムボードとして掲げた白板の短歌は、カン・ハンナさんが日本の知で暮らし始めた頃の歌だそうです。日本語がたどたどしかった彼女が片言で「ありがとう」と言ったら、日本人のおじさんが「コマワヨ(韓国語のカジュアルな「ありがとう」)」と返してくれたのだそうです。あたたかい短歌ですね。

2021年6月19日、ブログにカン・ハンナさんの短歌「終わらないでほしい恋さえ終わるから終わってほしいコロナも終わる」を紹介し、こう書きました。

カン・ハンナさんを知ったのは、千葉聡さんが編集した「短歌研究ジュニア はじめて出会う短歌100」という本でした。奈良時代から令和までの100首が納められたこの本で、唯一「令和の短歌」で紹介されていたのが、カン・ハンナさんの歌だったのです。その後彼女をテレビで見かけ、「あ、この人がカン・ハンナさんだ!」と認識するようになったのでした。韓国から日本に来て、自身の研究を続けている若き女流歌人カン・ハンナさんは、第一歌集「まだまだです」で第21回現代短歌新人賞を受賞しました。「まだまだです」を読みました。海を挟んで二つの国の間で揺れる思い、お母さんへの思い、心にしみます。日本語を大事に大事に詠んでいる歌の一言一句の端正な美しさが全編通じて感じられる歌集です。

それから3年、 TEDxHamamatsu2024のスピーカーとして西遠の地にいらしてくださると知った時のオオバの感激と言ったら…! 当日、白いワンピースで登壇し、短歌を交えて話されるカン・ハンナさんは、オオバには天使のようでした!もううっとりするばかり。アフターパーティーでご挨拶もできて、一緒に写真も撮らせていただいて、天にも上る心地とはこのこと!

秋休みに、もう一度「まだまだです」を読み返そうと思います。TEDxで話してくださった彼女の考え方・生き方が、さらに深く読者の私を導いてくれることでしょう。

9月24日(火)
ちぎれたる雲のふたたび重なるをひとり見てをり窓拭きながら
      佐藤モニカ

空の雲の動きをついつい目で追ってしまうひととき。窓拭きをしながら、作者が一人の時間をゆったりと過ごしている様子がうかがわれますね。友人と楽しく会話する時間も楽しいですが、一人でゆったり過ごせるひとときも、人には貴重です。

9月25日(水)
砂糖菓子のやうにふんはり釉薬のかかりし萩の器のぬくもり
       清水泰子

萩焼きの器の優しい色合いやあたたかなぬくもり、釉薬(ゆうやく)のかかり具合などを想像させる短歌です。砂糖菓子という冒頭の比喩が、「ふんはり」を彩っていますね。筆者は、両手で包み込むように萩の器を愛でているのかしら。頭の中でその器を想像するのも楽しいですね。

9月26日(木)
金木犀好きっとしつこく言っておく秋が来る度思い出してね
      寺嶋由芙

そろそろ金木犀(キンモクセイ)が香り出す季節ですね。先始めるのは10月初旬かな。
西遠にも金木犀がたくさんあります。秋休みが終わったら、ぜひ校内のキンモクセイ巡りをしてください。
この短歌、なんだか切ないですね。キンモクセイの香りは、別れたあとの大切な人に自分を思い出させる大事な大事なアイテムなのです。
作者の寺嶋さんはアイドル。アイドル歌会の常連さんです。白板への登場は2022年11月以来2回目です。

9月27日(金)
すべての音をひとつの場所に向かわせて指揮の手が風となる十分
        川上まなみ

指揮者のもと、演奏する全員が一つになっている情景が目に浮かびます。「指揮の手が風になる」って素敵な表現だなあと思いました。芸術の秋、音楽に携わる人にはこの短歌が心に響くのではないでしょうか。

9月28日(土)
私たちは重荷を負いあい、支えあって生きるという姿勢を捨てるべきではありません。世界が金と力で動かされ、利己主義や敵意、我執や妬みで満ちているとはいえ、この世界をかろうじて破滅から守っているのは、このような「支えあう」という善意の努力かも知れません。
     中村哲

中村哲さんを知っていますか? アフガニスタンの人々で彼を知らない人はいないと言われています。 NGO「ペシャワール会」代表として、アフガニスタンの民衆のために医師として病気を治し、けがの治療をしただけでなく、水路を作り、砂漠化した大地に再び農地を蘇らせ、人々が豊かな生活が出来ように努めました。2019年12月、中村哲さんが乗った車が武装した集団に銃撃され、撃たれた中村さんら6人が亡くなりました。彼の言葉は、今も私たちの心を打ちます。平和な世界を構築するために何をしたらよいのか、彼のことを知り、彼の遺した言葉に耳を傾けてください。