小さな白板2024 第42週

図書館入り口に掲げた「小さな白板(ホワイトボード)」、第42週は「あいのうた 短歌集」から家族の愛をテーマにお送りしました。

「あいのうた 短歌集」は、平成26年(2014年)から公募している短歌の優秀作品を集めた本です。歌人の俵万智さんと田中章義さんが選者となって編まれたこの本は、「育児のはじまり」「子どもの成長」「子から親へ」「祖父母と孫」などの章に分かれて、素敵な短歌が並んでいます。

10月21日(月)
月、海、苗、繭、古都、ふみ、友、明日に夢まで旅をして決まる名の二字
        岸野由夏里

お子さんが生まれて名前を付ける。命名までには、おそらくどんなご家族にも「壮大な旅」があるのだなあと、この短歌を見て思いました。皆さんはご家族に名前の由来を聞いたことがありますか? そこには、親御さんの願いや祈り、夢、希望…、ロマンチックな、あるいは劇的な「壮大な旅」があったことでしょう。

10月22日(火)
ふた文字がこんなに胸を打つなんて 子が口にする初めての「ママ」
       足立有希

命名の次は、赤ちゃんが発した言葉に感動するお母さんの歌です。我が子から「ママ」と初めて呼ばれた時に嬉しさが、この短歌からズキューンと伝わってきますね。子育ては、毎日が「初めて」尽くし。その中でたくさん我が子から感動をもらい、親もまた成長していくんですよね。子育てで悩んだ時、親はここに戻らなくちゃいけないのかもしれません。

10月23日(水)
十年後君の記憶にあらずとも今日十回目のはらぺこあおむし
       林咲季

「はらぺこあおむし」懐かしいなあ。
ありました、ありました。子どもが小さいとき、際限なく同じ絵本を読むよう要求されたこと! 子どもにとっては、お気に入りの絵本にはいつもそばにいてほしいし、それを大好きな人の声で聴かせてもらいたい、そんな子どものささやかな欲望を受け止めるお母さん。記憶に残らなくたって、その瞬間の笑顔が親を癒します。何度も何度も同じ絵本を読んであげるそのひとときを、大事に大事に慈しみたいものです。

10月24日(木)
「ショージキ」に話せと言われ幼子は「ソージキ」前に頭下げおり
       河内早苗

子育て中の微笑ましいエピソードですね。「正直」を「掃除機」と聞き間違えてしまった、かわいい勘違い。「正直に言いなさい!」と我が子を叱ってたはずが、「掃除機」のジェスチャーに吹き出してしまったお母さんが、目に浮かびます。
子どもの言い間違い、聞き間違い、思い出すと笑っちゃいますよね。我が家でもありましたよ。
 娘「私、背中にホタルが3つある」
 私「それはホクロ!」
 息子「僕、ホタルとまったことある!」
 私「それはホテル!」
 (漫才か!)

10月25日(金)
子育てはミシンの使い方に似て まっすぐ進めと手を添えるだけ
       坂東典子

だんだん子どもも大きくなってきました。親は「子育て」を何にたとえるのでしょう。「ミシンの使い方に似ている」と歌うこの短歌、作者がこれまでの子育ての試行錯誤の日々を思い起こしているかのようにも感じられます。「まっすぐ進めと手を添えるだけ」だと分かるまでの日々は、きっと長い道のりだったのではないかしら…。

10月26日(土)
ねえばあば 昔わたしに言ったよね 愛は自分を変えるんだって
       小田卓人

「愛は自分を変える」…おばあちゃんからのこの言葉をずっと覚えている作者。年月を超え、生死を超えて、その何気ない一言が継承されていく、生きる支えになっていくのですね。家族って壮大な「ネバ―エンディングストーリー」。「あいのうた」を読んでいると、終わらない物語を感じて、心が満たされていくのです。

「あいのうた 短歌集」ぜひ皆さんも手に取ってみてください。家族にも、愛にも、いろんな形があります。微笑ましくもあり、せつなさも漂って、読み応えのある一冊です。

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