小さな白板2024 第46週

図書館入り口の「小さな白板(ホワイトボード)」、生活職のある短歌をと思って選んだ一週間でしたが、途中、谷川俊太郎さんの訃報に触れ、水曜日に谷川さんの詩を紹介しました。

11月18日(月)
靴下はなぜか連合ひ見うしなふことおほく元に戻らぬもおほし
        大山敏夫

靴下ってどうして一方だけどこかに行っちゃうんでしょう。似てる柄だけど、違うコンビにすり替わることもあり、なかなか厄介なものです。靴下の左右を「連合ひ(つれあい)」という言葉で表現していることで、靴下が急に生きものみたいに思えてきます。

11月19日(火)
千切りのキャベツの山をしぼませるドレッシングはまるで君のよう
      カン・ハンナ

TEDxHamamatsu2024でスピーカーのお一人として西遠にいらっしゃったカン・ハンナさんの歌集「まだまだです」より。キャベツの山一つをしぼませるドレッシングが、「まるで君のよう」だなんて、「君」という人は相当ダメージのある言葉や行動で、作者をしぼませてしまったのでしょうね。ハンナさん、元気出して!と声をかけたくなります。

11月20日(水)
いやだ と言わせてください
いやがっているのはちっぽけな私じゃない
幸せになろうとあがいている
宇宙につながる大きな私のいのちです
      谷川俊太郎「いや」より

この言葉は、図書館にある谷川さんの本の中の一冊で出会った詩の一説です。谷川さんが亡くなったというニュースはショックで、何をしたらいいのかが分からないまま、私は図書館に向かっていました。彼のたくさんの本がありました。ブログには改めて谷川さんについてまとめの文章を載せたいなと思いますが、まずはこの詩をご紹介します。「いや」という意思表示の崇高さを、こんなやさしい(優しいの意味も、易しいの意味も含めて)言葉で教えてくれる谷川さんって、やはり言葉の仙人みたいだと思います。偉大な方が亡くなった喪失感をいまだに味わっています。

11月21日(木)
けっきょくは無難な方を選びたる凡庸がよし暮らしのことは
      千々和久幸

この短歌を書かれた千々和(ちじわ)さんは、前年に奥様を亡くしています。ご夫妻の足跡を一人たどりながら、奥様を追悼し、「凡庸」の有難さを噛みしめていらっしゃるのでしょう。暮らしのことは、無難で凡庸こそがよいのだ、良かったのだ、と。人生の深さを感じます。

11月22日(金)
油揚げほしくなる冬めぐりきて葱の香のするキッチンに立つ
       馬場あき子

すっかり冬になりました。寒くなったら紹介しようと、出番を待っていた短歌です。油揚げに、葱(ねぎ)の香り、お腹が空いてきそうです。そして、心も体も暖まるお料理が脳裏に浮かびますね。台所と書かずにキッチンとしているところが、純和風の過去(例えば昭和の時代)ではなく、令和の今を切り取ってる感じがしました。 

☆  ☆  ☆

週末、嬉しい再会がありました。東京と横浜から、二人の卒業生が大庭に逢いに来てくれたのです。オーストラリア研修の元年、学園祭ではガラパゴスのHR展を作った3年月組メンバーです。
会うのはいつ以来だろう?と三人で記憶をたどりましたが、全然いつ以来か思い出せず(笑)。でも、会わない時間は長かったけれど、そんな隙間はサッと埋めてしまうかのごとく、とても楽しくおしゃべりし、二人の歩んだ道も聞いて、仕事に頑張る姿を想像してとても頼もしく思い、そして明るい気持ちになりました。

「17歳の像が動いてる!」から始まった校内探検珍道中。二人の在校中は、まだ、静思堂の北にありましたものね。どうやら、この像にいたずらした過去もあるらしく、とても愛のこもったまなざしで、17歳の像を見上げていましたよ。「レストハウスがない!(図書館が建ちました)」「なんだ、この庭は!(ローズガーデンです)」と校内各所で驚きの声をあげる二人。体育館では、中村と先生との再会に感激していました。
二人の在学中にはまだ建っていなかった生活会館の中も案内しました。
中学の学年主任だった大塚はる子先生に会いたいなあと二人しみじみ話していました。

すっかり落ち着いて風格も出た二人。でも、笑える話の数々も出て、変わらないところも嬉しかったです。それぞれの道を切り拓いて頑張っている二人のこれからの活躍を祈ってます。また会いましょう!