11月の最後の週となりました。図書館入り口の「小さな白板」のラインナップを紹介します。
11月25日(月)
啄木と多喜二が書架の上段に並びて立てり冬の図書館
前野昭人
図書館の冬を歌った短歌です。石川啄木と小林多喜二、生徒の皆さんはこの二人のことを知っていますか?生活の歌を詠み、大逆事件に憤り、貧困の中で若くして亡くなった啄木。プロレタリア文学の作家として命を奪われた多喜二。その生涯を想えば冬にふさわしい文学者二人の本が、本棚の一番上に並んで立って、作者を見下ろしています。
11月26日(火)
木の枝にびっしりといる椋鳥は鳴かず左右に首を動かす
川本千栄
ムクドリは浜松でも20年以上前からでしょうか、群れを成して人々を困惑させています。駅周辺や、河川敷の近くなど、この鳥たちの群れの大きさと言ったら…。木の枝という枝にびっしりと群れている椋鳥を観察する作者。鳴かずに首をひたすら動かしているんですね。西遠も椋鳥は来ていますが、大所帯にならないように祈るばかりです。
11月27日(水)
しあはせは冬の日向に犬と居て犬の耳など裏がへすとき
山本寒苦
犬のいる生活。その幸せは冬にこそあるのかもしれませんね。ひなたぼっこする作者と愛犬の姿が目に浮かぶようです。どんな犬種なのでしょう、私は、眼を細ーくしている柴犬を想像しました。
11月28日(木)
銀髪の婦人のやうな冬の日が部屋に坐しをりレースをまとひ
梅内美華子
冬の日差しを「銀髪の婦人」に例える想像力がとても素敵に感じました。上品で、凛とした銀髪の婦人のような冬の日。老齢の貴婦人は、レースをまとって、作者の視線の先の部屋に背筋を伸ばして座っていらっしゃるのですね。
11月29日(金)
九が好き憲法九条坂本九第九合唱野球の九回
伊藤敏
「九」という数字尽くしのこの短歌。せっかくなので、29日という九のつく日に掲げました。よくもたくさん「九」を集めたなあと思いつつ、作者の一番訴えたかった「九」はどれなのかな、と考えています。皆さんはどう思いますか?
11月30日(土)
矢となりて飛ぶ飛びながらゆくさきは春夏秋冬のルーレット
内山晶太
「短歌研究」2024年11月号に「あたらしい韻律」「おもしろい韻律」という特集が組まれていて、その中に紹介されていた一首です。「飛ぶ/飛びながら」と「句割れ」のある第二句。それがスピードを感じさせます。まさにおもしろい韻律!短歌の可能性がいっぱい詰まった特集を読みながら、白板に書きたい短歌をたくさん書き留めたオオバでした。
「春夏秋冬のルーレット」という言葉に、11月最終日の掲載を選びました。
今日から師走。慌ただしい日々となりますが、ブログにも載せたい記事がたくさん! 白板にも綴りたい短歌や詩、名言がたくさん! さあ、2024年の締めくくりの一か月、頑張って進みましょう!