12月2日からの第48週と、9日からの第49週を駆け足でご紹介します。
12月2日(月)
よしあしは後(うしろ)の岸の人にとへわれは颶風にのりて遊べり
与謝野晶子
12月3日(火)
冬の夜のねむりのなかで群青の風に飛び乗る遊びをしよう
小島ゆかり
12月4日(水)
もう人間であることをやめた智恵子に
恐ろしくきれいな朝の天空は絶好の遊歩場
智恵子飛ぶ
高村光太郎「風に乗る智恵子」より
12月は与謝野晶子の短歌からスタートしました。そして、「風」をキーワードにして3日間の白板を書きました。
与謝野晶子は、評判や評価などはのちの人に任せておけばいい、私は今この颶風(強く激しい風)の中に自由に生きるのだ、という「我が道を行く」強さと奔放さを歌い、小島ゆかりさんは「群青の風に飛び乗る遊び」を眠りの中(夢の中)でしようとしています。心の自由がありますね。最後の詩集「智恵子抄」の中の一篇「風に乗る智恵子」は、すでに精神的に病んでしまい、夫との意思疎通もままならない妻智恵子の九十九里での様子が描かれています。彼女もまた風と遊んでいるけれど、それは、前の2つの短歌とは全く違います。夫の慟哭が聞こえてきます。
三者三様の「風」を12月最初にお届けしました。
12月5日(木)
炭のシャンプー薔薇のシャンプーオレンジのシャンプーすべてまぜてわしわし
郡司和斗
何だかこのめちゃくちゃなシャンプーの混ぜ方が心地よくって、この短歌を白板に書きました。生徒にも「うん、いい! ストレス忘れそう!」と評判良かったです。
12月6日(金)
全天を回しつづけるさみしさを浮かせて冬の北極星は
永田 淳
北極星の周りを星は回っているけれど、当の北極星は「全天を回し続ける」という責務の重さやそれゆえの孤独を抱えているのかもしれません。
12月7日(土)
望もうと望むまいとあなたは独りじゃない。
真宗大谷派・超覚寺(広島市)
2024「お寺の掲示板大賞」受賞作
お寺の掲示板に掲げられた言葉は、読む人の慢心を諫めたり、社会への痛烈な批判を訴えたりします。この言葉は、読む人に優しく、力強く「あなたは一人じゃないよ」と呼びかけています。
それにしても、「お寺の掲示板大賞」とは面白いですね。
12月9日(月)
愛ということば孤独ということば 寡黙な人は身を以て生きぬ
三枝浩樹
黙して語らぬその生き方の中に、愛も孤独も「身を以て」表現されるのですね。美辞麗句ではない寡黙で武骨な生きざま。
12月10日(火)
さあ、私たちが望む世界をつくる時です。目を閉じて、平和と信頼、共感のある世界を想像してください。一緒にその世界を実現しましょう。
マリア・レッサ
12月10日、ノーベル賞の授賞式の日です。マリア・レッサが2021年12月10日ノーべル平和賞受賞のスピーチで述べた言葉を紹介しました。インターネットメディアの「ラップラー」を設立し、代表を務めているマリア・レッサは、2021年「フィリピンで、権力の乱用や暴力の横行、それに強まる専制主義の実態を自由な表現で暴いた」ことで、ノーベル平和賞を受賞しました。
12月11日(水)
母は、いつも『自分で考えなさい』と。自ら考えれば内省もするし、社会への疑問も生まれてくる。それを教えてくれた。
落合恵子
落合恵子さんがお母さんについて語ったインタビューの中にあった言葉です。「自分で考えること」を教えてくれたお母さん。彼女の原動力は母からもたらされているのでしょう。
12月12日(木)
とりあへず湯を沸かしをる夜食かな
折戸洋
久しぶりに俳句を載せました。寒い夜、湯気のあたたかさを感じるような句。朝日俳壇2022年10月23日に掲載されていた一句です。
12月13日(金)
マッチはいかが〈たすけて〉とふ少女のこゑを聴き取れぬいまも街のだれもが
松本典子
マッチ売りの少女は、「マッチはいかが」という言葉の中に「助けて!」という心の叫びを込めているのに、その意味に気づいた人はいたんだろうか。いや、今も、声にならない叫びをあげているこどもの窮状に、街の誰もが気づいていない…。「人権」についての講堂朝会を前に、白板に書いてみました。
12月14日(土)
‟Buki de Naku Ai de Tatakau.” 武器でなく愛でたたかふ 武器ではなく
大口玲子
アウシュヴィッツ強制収容所で死刑に選ばれた男性の身代わりとなったコルべ神父。彼は、1930年代に長崎に滞在していました。コルべ神父の日記の一節を引用したこの短歌を読み、作者と共に、「武器でなく愛でたたかふ」という言葉を反芻していました。
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昨日は、「第2回西遠高校入試説明会」でした。ご参加くださいました中3の皆さん、そしてご家族の皆様、ありがとうございました。ぜひ、西遠の仲間になってください!
今夜は満月です。木星とアルデバランが、コールド・ムーンの近くで輝いていました。