今年心に残った本たち2024

今年も残り少なくなってきました。昨年の12月29日、「今年心に残った本たち」と題して、「アボカドの種」「祖母姫、ロンドンへ行く!」「やさしい猫」の3冊を挙げました。→こちら

昨年に倣って、今年も、心に残った本を挙げてみます。但し、かなり目が悪くなって長時間の読書に耐えられなくなってしまいましたので、分母は少ないです…すみません。

「涙にも国籍はあるのでしょうか―津波で亡くなった外国人をたどって―」三浦英之著

三浦英之さんは朝日新聞の記者です。彼の本を今まで何冊読んだでしょうか。調査の深さだけでなく、物語のような文章力にどんどんページが進みます。しかし、ルポルタージュの内容は決して明るいものではありません。
今回読んだこの本は、2011年3月11日の東日本大震災で亡くなった外国人の方々の生と死、そして遺された人々のその後を丹念に調べた一冊でした。津波によってたくさんの方が亡くなったことは知っていても、どのくらいの外国人の方々が亡くなり、その死がご家族や同僚たちの心にどんな思いを残したのか、あるいは忘れられてしまったのかを、私はこの本を読まなければ知ることがなかったのではないかと思います。著者である三浦さんの人間性があればこその一冊。様々な国から日本に来て働いている人、家族となった人がいることを考えれば、災害での死とその涙に「国境」などあってはいけないと心から思ったのでした。

「三淵嘉子 先駆者であり続けた女性法曹の物語」 神野潔 著

朝ドラ「虎に翼」のおかげで、三淵嘉子さんという方の存在を知り、3冊の本を読みました。その中で、最初に読んだこの一冊「三淵嘉子 先駆者であり続けた女性法曹の物語」を紹介します。
三淵さんは日本の法曹界を助詞として切り拓いていった方です。その努力や苦労もさることながら、とても魅力的なお人柄も本の中にたっぷり紹介されていて、ドラマとはまた違う意味で、私は「先駆者」として毅然として生き切った三淵さんに心から感嘆したのでした。
走り抜けるだけでなく、後進のためにも尽力したその姿勢は、11月の高校講堂朝会で紹介したヒラリー・クリントンやカマラ・ハリスにも通じまるものです。「女性としていかに生きるか」を考えさせてくれる本です。

「宙わたる教室」伊与原 新著

この「宙(そら)わたる教室」もドラマに感化されて手に取った本です。読みながら、これは「西遠生にすすめる本」に入れてもらおう!と強く思いました。
定時制高校に赴任した少し不思議な理科の先生と、いろいろな悩みを抱えて集まっている生徒たちが、「科学部」で「教室に火星を作る」というチャレンジを始めます。学歴や学閥とは無縁の、可能性を秘めた定時制高校の生徒たちが、どんどん成長していく姿が本当に感動的です。
因みに、NHKで放映したドラマ「宙わたる教室」は、複数の評論家により「2024年のベストドラマ」に選出されています。本が苦手な方は、まずドラマを見てみるのもいいかもしれません。この本を読んでから(あるいは、このドラマを見てから)見上げる星空は、いつもと違う瞬きをしているかもしれません。

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このほか、「戦争は」「へいわとせんそう」などの絵本も心に残っています。夏の図書館イベントでは、「戦争」「原爆」について取り上げたのですが、その時参加してくださった小学生とご家族が、イベントをきっかけにして広島旅行に行かれたと伺い、感激しています。

また、短歌研究社の月刊誌「短歌研究」を今年も毎月読んでいました。短歌に触れる時間は、私の心を豊かにしてくれます。まだまだ私の解釈は浅く甘いのですが、来年も様々な短歌を「小さな白板」を通して生徒の皆さんに紹介していきたいと思います。

以上、2024年の「心に残った本たち」でした。