小さな白板2025 第1週

2025年も、図書館入り口に「小さな白板(ホワイトボード)」を飾ります。短歌や俳句、詩の一節、さらに短い文章など、今年も皆さんの目に留まれば嬉しいです。

1月7日(火)
平和/それは花ではなく/花を育てる土/平和/それは歌ではなく/生きた唇
       谷川俊太郎

今年1月1日の朝日新聞、その「折々のことば」に載っていたのが、この谷川俊太郎さんの詩の一節でした。心にグッときました。

「折々のことば」では、鷲田清一さんがこの詩を「平和は旗として掲げるものでなく、着なれた下着やいつも吸っている空域のように『あたりまえなもの』としてあるはずだと、詩人はいう。『退屈』で『素気ない』のがその証しであるほどに。それは、歌うものでも祈るものでもなくて、人々の身を養うもの。だからなくてはならぬもの。詩集『うつむく青年』(1971年)から。」と紹介しています。

平和とは旗として掲げるものではない。花ではなく、育てる土の方なのだ。歌ではなく、口ずさむ唇の方なのだ。
俊太郎さんは亡くなってからもなお、こうして鷲田先生を通じて、しっかりとメッセージを届けてくださっています。 たった6行の「折々のことば」に、今年の生き方の指針をもらったように思いました。平和の維持と実現に向けて考える人間であること、行動する人間でありたい、と強く思いました。

1月8日(水)
教室で未来の話ばかりして過ごす一月クリスタル色
       松田わこ

朝日歌壇の常連 松田梨子・わこさん姉妹の短歌は、今年もたくさん取り上げることになると思います。この短歌も、高校の教室を思い起こさせて、とても素敵ですね。10代の生徒の皆さんには、いつもキラキラした未来を持ってほしいと心から思います。

1月9日(木)
みかん一つに言葉こんなにあふれおり かわ・たね・あまい・しる・いいにおい
       俵 万智

みかんの季節ですね。みかんの皮をむいてお子さんに食べさせているのでしょうか。たった一つのみかんにこんなにもたくさんの言葉が詰まっているということは、もしかしたら、子どもを産んで育てるからこそ発見できたことなのかもしれません。俵さんの短歌に助けられながら子育てをしている人も少なくないのではないかしら。

1月10日(金)
十二色のいろえんぴつしかないぼくに五十五色のゆふぐれが来る
       荻原裕幸

夕暮れの美しいグラデーションは、繊細で複雑で、とても簡単に描いたり言い表したりできるものではないですね。それを、「十二色のいろえんぴつ」と「五十五色のゆふぐれ」という数字を使うところに感嘆しました。五十五という数字に自然への畏敬までも感じます。自分の持ついろえんぴつの少なさは、自分の持っている表現方法の限界でもあるのかもしれない…。荻原さんの繊細で優しい短歌の数々を知れば知るほど、自分は1,2色しか持っていないなと思ってしまう私です。

ちょうど、昨日の夕方、西遠のグラウンドの向こうに美しい夕暮れが見えました。きれいだなあと思いながら写真に撮ると、実際に見た色の美しさは忠実に再現できていないような気がします。でも、それがいいのかもしれません。本当に美しいものは簡単に再現できるものではなく、心の中に美しさをとどめるのが一番なのでしょう。表現の拙さという自分自身の弱点を痛感しながら、私自身も日々、自然の美しさに出会っていくのだと思います。

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色と言えば、今年も校長室に「日本の色」の日めくりカレンダーを置きました。隣には、「花」の日めくりも。昨夜、校長室を出る前に、10日から11日に日めくりをめくって写真にとどめてきました。

今年もいろいろな色に出会える楽しみがあります。