図書館入り口に掲げた「小さな白板(ホワイトボード)」、実力テストもあった第6週を振り返ります。個人的には、「梅」の短歌を用意していたのに、今年の梅の開花が遅れてハクハクしていました。遂に学園の梅も咲いたので、梅の短歌をやっと白板に書くことができました。ほっ!
2月10日(月)
ぬいぐるみ型の爆弾あるといふ 人は抱くもの、抱きしめるもの
斎藤美衣
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少し前に、齋藤美衣さんの『世界を信じる』という歌集を購入しました。 読み進めると、心に残る短歌にたくさん出会います。仕事の短歌、子育ての短歌、四季の移ろい…。仕事の短歌には共感し、子育ての転嫁には昔を思い出しました。いつか白板で紹介したいなと何首も書き留めました。その中の一首を週初めに白板に書きました。
ぬいぐるみは抱くもの、抱きしめるもの。その愛の行為を悪用する「ぬいぐるみ爆弾」に対し、斎藤さんの静かな怒りと悲しみが伝わります。「ぬいぐるみ爆弾」の存在を知ったのは、黒柳徹子さんの『トットちゃんとトットちゃんたち』だったでしょうか。ユニセフ大使の黒柳さんが、子どもたちの大好きなぬいぐるみに爆弾を仕掛けるという卑劣な行為に、怒りの声をあげていたことを思い出します。
この短歌は、私の分類の中で「平和」のジャンルにストックしました。
2月12日(水)
昏れのこるビルのあいだのうす空のしら梅咲くをきみに伝えん
大井 学
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待ちに待った梅の開花。見つけると、誰かに伝えたくなるものです。ビルの間に咲く白梅を見つけた作者の「開花を伝えたい」想いが伝わってきます。西遠の枝垂れ白梅の花も本当に美しいので、生徒たちに知らせたくて、「梅、見ていかない?」と怪しく誘ってしまうオオバです。
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2月13日(木)
アカサカのアカサカサカス前のサカ アカサカサカスサカで差す傘
わだたかし
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東京の赤坂に「赤坂サカス」という新しい名所ができたことはよく聞きますが、私はまだ行ったことはありません。その固有名詞をカタカナ表記にして、傘まで登場させて、こんな早口言葉みたいな短歌が生まれました。楽しくなります。いつか「赤坂サカス」に行った時、雨ならこの短歌を口ずさみたいな。
2月14日(金)
二月十四日ゴディバを送りくれし友に小川洋子『ことり』を返す
楠田立身
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この短歌に出会って白板に書くことに決めた時、作者はどんな気持ちで『ことり』をお礼の品に選んだのだろうと思い、掲載当日までに小川洋子さんの「ことり」を読まなくちゃ!と決意し、文庫本『ことり』を取り寄せました。
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不思議な本でした。小鳥を愛する兄は、鳥の言葉を発するけれど、人間としての会話は成立しない。唯一、弟の「小父さん」だけは兄の言葉が理解できる。母が死に、父が死んで、兄弟二人だけの閉じられた環境で、二人は穏やかに過ごしました。やがて兄が死に、弟は鳥や人と出会いながら、老いを迎えていきます。実は、この小説は小父さんの死から始まるので、その日までの壮大なカウントダウンを、読者はページをめくりながらたどることになります。
私をこの小説に出会わせてくれた短歌の作者大井さんは、ゴディバをくれた友達にこの本を返した(ホワイトデーかな?)訳ですが、さて、友達とは同性なのか、異性なのか、どんな気持ちを込めてこの本を選んで贈ったのか・・・。短歌の謎は解決するどころか、以前より深まっています。
2月15日(土)
わたし自身わたしを理解していないお腹が痛い子供のように
東 直子
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今月2回目の登場。東直子さんです。この短歌は、講堂朝会の話題と連動するかもと思い、書いてみました。「言葉を力にする」というタイトルでお話をしましたが、その中で「自分の体調を説明できる言葉を持たないと、分析もできず、人にも伝えられず、体調はどんどん悪くなってしまう」ということを話し、だから言葉を豊富にしようと訴えました。この白板を使って補足するならば、生徒の皆さんの周りにいる大人は、皆この課題を克服した完成形ではないんだよ、ということです。大人もまた、自分自身を理解・説明しきれないでいるのです。「言葉を力にする」ことはまさに一生ものの課題です。
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図書館に「最後の晩ごはん」シリーズ20巻(椹野道流著)を寄贈いたしました。今年度最後のテストも終わったので、ぜひ皆さん、読んでみてください。中学生の皆さんは、この本が気になった、と昨年10月の講堂朝会のあとで語ってくれましたよね!
中1:気になる本の上位
中2・中3:気になる本 第3位
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