図書館入り口の「小さな白板(ホワイトボード)」、3月10日~13日の第10週と、25日からの第11週をお届けします。
3月10日(月)
犬小屋の跡地にすみれ咲いていてまたラ・フランスめく月曜日
川上真央(第5回短歌研究ジュニア賞高校生の部金賞)

「短歌研究」で発表された「第5回短歌研究ジュニア賞」の高校生の部で金賞に選ばれた川上真央さんの作品。「ラ・フランスめく」って、とてもおしゃれ。一方、「犬小屋の跡地」ということは、そこに君臨していた犬はもう今はいないんですよね。自分にゆかりある犬であればあるほど、跡地を見るたび、心にぽっかり穴があいたような喪失感や寂しさを感じることでしょう。そんな中咲いたすみれに新たな命の宿りを感じて、なんだか明るい気持ちになれるような、やわらかな短歌でした。
3月11日(火)
まずマスクついでマフラー、ジャンパーと脱皮しながら土手道あるく
久々湊盈子(くくみなとえいこ)

春の散歩中、だんだんと暑くなってきて、着ていたものを順に脱いでいくことを「脱皮」と表現した作者。1枚「脱皮」するたびに、春の身体へと進化していく感じがします。
3月12日(水)
未来とはあたたかきものふんわりと抱きしめる子の中にあふれる
永井歌歩

抱きしめた子どものあたたかさに未来を感じている作者。3月の朝日歌壇で見つけて、とても共感した一首でした。
3月13日(木)
おほかたの荷物は送りギターのみ背負(しょ)って息子が家を出ていく
大口玲子

春は、旅立ちの季節。大学に行くのか、社会人になるのか、わが子の出発を歌った短歌を載せました。この短歌は息子ですが、お嬢さんの旅立ちにまぶしい思い・寂しい思いを抱きながら見送る方も、この春多いのではないでしょうか。
次からは第11週です。2021年から使っていた白板を、この週から新調いたしました。
※初代白板、ありがとう! 青い枠がよくはずれて、そのたびボンドでくっつけて、白板消しのマグネットにクリップがくっついたことに気づかずボード表面に傷をつけて、…酷使しました。4年間頑張ってくれた白板でした。
3月25日(火)
知りあえたあなたにこの歌を届けよう
今後よろしくお願いします 名刺がわりにこの歌を
「切手のないおくりもの」より
作詞:財津和夫

新中1、高1のオリエンテーションのこの日、出会いを祝してこの歌を贈りました。昨年の紅白冒頭の歌でもあります。
新入生の皆さん、「今後よろしくお願いします」!
3月26日(水)
咲こうかなそれとも明日咲こうかな塾の帰りに桜の会話
松田梨子

本当に桜の会話が聞こえてきそうですね。松田梨子さん・わこさん姉妹の歌は、若い感性でハッと気づかせてくれるような短歌が多いです。
3月28日(金)
びっしりと白から真白うまれいるまるい花びら雪柳咲く
江戸 雪


ユキヤナギの白は本当にきれいです。心が現れるような純白の花が咲くと、姿勢を正したくなります。
そんな白い色を、「白から真白うまれいる」と表現した作者に、すごいなあと感嘆しました。
写真のユキヤナギは、我が家のものですが、西遠のユキヤナギも、静思堂の前や生活会館の前に、美しく咲いているのです。皆さん、見つけてくれましたか?
3月29日(土)
桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命(いのち)をかけてわが眺めたり
岡本かの子

桜の花が命をかけて咲いているのだから、自分自身も命をかけて眺めているのだという、花と自分との妥協なき真剣な対峙を感じさせる歌です。今年のスプリングフェスのお客様をお迎えする歌としてこれを選びました。さらに、この歌が2025年の3月最後の白板の歌となりました。
次回は4月3日の高校入学式の日ですね。新年度も宜しくお願い致します。