小さな白板2025 第13週

図書館入り口に掲げている「小さな白板(ホワイトボード)」、中学入学式をはさんだ第13週のラインナップをどうぞ。

4月7日(月)
白木蓮散りてしづかになりし庭雪柳木瓜咲きて明るし
       草野百合子

ハクモクレン、ユキヤナギ、ボケ。3つの春の花が出てくるこの短歌。庭の静けさ、植物の花の特徴、そして咲く順番に込められた自然界の厳かさを感じさせます。花の名の漢字表記には風情がありますね。ハクモクレンは見事に咲いても花の時期は短く、さっと散ってしまいます。木蓮という華やかな木の主役が去った庭に、目を下に移すと、雪柳の白や木瓜の赤い色が明るい春を演出し始めていたのでしょう。春は次々と花が咲きます。気づくと青葉も顔を出しています。皆さんも春の庭を眺めてみてください。

4月8日(火)
講堂に入り来る娘(こ)らは磨かれし 銀の匙のごと整列したり
       湯一美

「あいのうた」2019年度受賞作品の一つです。この短歌を読んだ時、西遠の中学入学式が脳裏に浮かびました。「磨かれし銀の匙(さじ)」…なんて素敵な例えなのでしょう。新入生の緊張と誇りが伝わってきます。この作者は西遠の保護者ではないかしら、とさえ思いました。そんな思いを込めて、この短歌を入学式の日に掲示しました。

4月9日(水)
牧場にすみれの花が咲き渡り草もろともに牛は食ひゆく
       小野長辰

朝日歌壇ライブラリで見つけた短歌です。菫の花、きれいだなと思っていたら、牛に食べられてしましました…。牛にとっては、花をめでるなんて考えられないでしょうね。草も花もモグモグ食んでいく牛の姿は、どこか憎めませんね。

4月10日(木)
タンポポのような一世も悪くないあるがまま野の風に吹かれて
       江副壬曳子

ハクモクレン、ユキヤナギ、ボケ、スミレ、そしてタンポポ。今週は春の花がたくさん出てきました。風に吹かれるままのタンポポのような一生も悪くないな、と思う作者。自己主張や固執のない生き方にあこがれながら、黄色いタンポポの花、或いは綿毛になったタンポポを見つめているのかもしれません。

4月11日(金)
沈丁花の香に振り返る 手をにぎってくれた人みなしあわせであれ
       鯨井可菜子

花の短歌の最終日、ジンチョウゲの登場です。沈丁花の香りは本当にいいですね。香りで、そこに花があることがわかります。そんな沈丁花の香に気づき、振り返って花を探している作者。自分の手を握ってくれた多くの人たちの幸せを願っています。花の香に、自身の心に愛が生まれたのでしょう。花の力は偉大ですね。

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雨がひどく降っていますが、明日の登校時間には止んでいるといいなと思います。4月の雨は、新入生にとって試練ですから…。

この週末、2日間共、用事で学校に出向いたのですが、本館南のハナミズキがどんどん色づいてきています。青空の下でも、雨にけむる中でも、花は美しいですね。